話題0301 気管切開と感染


From: "hayakawa mineji"
To: <CCN@koto.kpu-m.ac.jp>
Subject: [CCN:02534] 気管切開と感染
Date: Mon, 19 Feb 2001 13:42:30 +0900

早川 峰司@市立札幌 救命救急センターです。

気管切開と切開孔の感染についてお伺いします。

気管切開を施行する際に、気道系の感染が存在する場合、切開孔の感染の危険性が高いので適応が無いのではないか?
特にMRSAの場合、鼻腔や咽頭におけるcolonizationであっても注意が必要なのではないか?

といった意見があるのですが、他の施設では如何なものでしょうか?
気管切開の施行前に、鼻腔/咽頭の常在菌の検索などは一般的に行われているのでしょうか?

御教授願います。


From: "和田 浄史"
To: <CCN@koto.kpu-m.ac.jp>
Subject: [CCN:02545] Re: [CCN:02534] 気管切開と感染
Date: Wed, 21 Feb 2001 21:43:44 +0900

和田浄史@川崎協同病院外科です。

気管切開は、呼吸器感染等の呼吸器の異常がなくても、長期にわたる安全な気道確保としての一つの有効な方法です。
挿管チューブでもきちんと管理・交換を行えばある程度の長期管理は行うことができるので、安易な気切は慎むべきでしょう。
しかしながら、呼吸器感染症の治療に難渋し、気道浄化をより確実に行いたい症例などでは、気管切開術はしばしば有効な手段です。

この際、呼吸器や気道、咽頭・喉頭・鼻腔等の感染があっても、気切を躊躇する要因とは全く考えていません。
基本的に気切孔はすべて汚染創であると認識すべきだと思います。
少なくとも気道常在菌には絶対暴露されるのですから。
ですから、気切孔を頻回に消毒して無菌に近い状態を保とうとすることにも疑問を覚えます。
造設した当初、感染を起こすことは時々ありますが、たいていの場合、程なく炎症は収まり瘻孔化します。
瘻孔化してしまえば、気切カニューレ抜去とともに瘻孔も収縮し、排菌はなくなります。

ただ、気切カニューレ周囲をあまりタイトに縫合閉鎖すると、縦隔気腫・縦隔洞炎等のリスクを背負うことになるので、気切孔周囲はドレナージを妨げない程度にルーズに寄せる方が安全です。
もし、創がMRSAに暴露されたとしても、ドレナージさえ良好であれば問題になることはほとんどありません。
気切孔の肉芽形成が問題となることが稀にありますが、気道系の感染との相関関係はあまりないように思います。
posttracheostomy stenosisに関しても、適切に造設・管理されたものであれば、問題になることはほとんどありません。
気切によって得られる他の恩恵(気道浄化や経口摂取や苦痛の軽減など)の方が優位になる場合が圧倒的に多いでしょう。

したがって当院でも、鼻腔/咽頭の常在菌の検索はしばしば行いますが、その結果で気切の適否を決定することはまずありません。

皆さんの施設ではいかがですか?


From: "hayakawa mineji"
To: <CCN@koto.kpu-m.ac.jp>
Subject: [CCN:02559] RE: 気管切開と感染
Date: Wed, 28 Feb 2001 01:16:54 +0900

和田先生、ご返事ありがとうございます。

>挿管チューブでもきちんと管理・交換を行えばある程度の長期管理は
>行うことができるので、安易な気切は慎むべきでしょう。

早期気切の医学的な有用性が示されていない現状では、私もその様に考えます。
(97年のJ Traumaのreport以外で早期気切について検討された物を知りませんが・・・。)

挿管チューブの交換についてですが、確かに定期的に交換する施設があるようですが、私自身はそのような所での勤務経験が有りません。
何か、裏付けがあるのでしょうか?


From: Segawa Yoshio
Date: Wed, 28 Feb 2001 08:35:24 +0900
To: CCN@koto.kpu-m.ac.jp
Subject: [CCN:02560] RE: 気管切開と感染

瀬川@NTT西日本大阪病院です。

ICUでは問題にならないと思いますが、一般病棟では挿管チューブがそのままの長さで入っていると看護婦さんが吸引をうまくしてくれません。熱傷でICUから一般病棟に行った経鼻挿管の患者で1回、他院から転送されてきた甲状腺腫瘍の患者が息苦しいというのでネブライザーをしたとたんに痰がチューブに詰まって呼吸停止まで行って、再挿管に非常に手間取って殺してしまったかと思った患者と2名ほど経験しています。
一般病棟の場合は気切してくれた方が憂えが無くていいです。


From: "和田 浄史"
To: <CCN@koto.kpu-m.ac.jp>
Subject: [CCN:02562] Re: [CCN:02560] RE: 気管切開と感染
Date: Wed, 28 Feb 2001 14:30:58 +0900

和田浄史@川崎協同病院外科 です。

気管内チューブの交換の意義の1つに、
「効果的な気道確保と気道浄化(吸引)」の維持が挙げれらると思います。
瀬川先生もおしゃっておられましたが、気管内チューブは、気切カニューレに比べると、やや気管内吸引がしにくいですよね。

長期に挿管されていたチューブを見ると、鼻くそのような硬い分泌物がたくさんこびりついて、内腔を狭小化していることがあります。
特に、肺炎等の気道感染の遷延で長期留置になった症例に時々みられます。
吸引時、カニューレ内にキシロカインスプレーを撒布している症例では、より顕著にあらわれます。
チューブを割いてみると、べっこうあめのようなとても硬い痂皮のようになっています。
そして、その付着物は非常にキュルキュルしてすべりが悪く、こうなるとサクションチューブがなかなか入っていきません。
中を綿棒で掃除したい衝動に駆られます(^_^;)……
入りが悪いと、Nsはますますキシロカインスプレーを撒きまくり、いたちごっことなります。

これらの付着物を排除し、常に有効な気管内吸引を行うには、(定期的ではないにしても)チューブの交換が最も効果的でしょう。挿管されていても、有効な気道確保が常になされているとは限らないという認識が必要です。
ただ、「全例○日ごとに交換」という取り決めは、あまり意味がないように思います(当科でも取り決めはありません)。

私個人は、サクション時にはキシロカインスプレーは使いません。
Nsによっては、吸引のたびに8%キシロカインスプレーを5〜6回噴霧し、それを10分おきに行っていたりします。
キシロカイン中毒になりそうな勢いですよね。

どうしても必要なときは、VILZON SPRAY ビルゾンスプレー(シリコーンオイルスプレー)富士システムズ株式会社を使っています。
わずかにスプレー(チューブ内ではなくサクションチューブに)するだけで、見違えるような潤滑性を得ることができます。


Date: Wed, 28 Feb 2001 15:33:33 +0900
To: CCN@koto.kpu-m.ac.jp
From: S Hashimoto <satoru@koto.kpu-m.ac.jp>
Subject: [CCN:02563] Re: 気管切開と感染、キシロカインスプレー

At 2:30 PM +0900 2/28/01, 和田 浄史 wrote:(一部引用します)
>
>
>Nsはますますキシロカインスプレーを撒きまくり、
>いたちごっことなります。
>
>私個人は、サクション時にはキシロカインスプレーは使いません。
>Nsによっては、吸引のたびに8%キシロカインスプレーを
>5〜6回噴霧し、それを10分おきに行っていたりします。
>キシロカイン中毒になりそうな勢いですよね。
>
>どうしても必要なときは、
>VILZON SPRAY ビルゾンスプレー(シリコーンオイルスプレー)
>富士システムズ株式会社 
>を使っています。
>わずかにスプレー(チューブ内ではなくサクションチューブに)するだけ
>で、
>見違えるような潤滑性を得ることができます。

橋本@京都府立医大集中治療部です。

和田先生のコメントに補足します。
キシロカインスプレーはブルーボトル時代に配合 されていたフロンが環境汚染の影響で排除され、エアーポンプ式となっています。
こ れまではこのフロンによって潤滑作用が得られていたのでサクション時に有用だったのですが、もはやこの目的でキシロカインスプレーを使うことは無意味です。
かつ口 腔内で苦みを少なくするために新たにサッカリンが配合されているのですがこれがど うもよくないように感じられます。
すなわち、長期的に留置した挿管チューブの内腔にこれがこびりつきサクションチューブが摩擦のために挿入できない事態がままあります。
うちではサクション時のキシロカインスプレーは禁止してます。


Date: Sat, 10 Mar 2001 19:16:27 +0000
From: Hideki Miyao
To: CCN@koto.kpu-m.ac.jp
Subject: [CCN:02575] Re: RE: 気管切開と感染

埼玉医科大学総合医療センター麻酔科
宮尾秀樹です

和田 浄史 wrote:長期に挿管されていたチューブを見ると、

> 鼻くそのような硬い分泌物がたくさんこびりついて、
> 内腔を狭小化していることがあります。
> 特に、肺炎等の気道感染の遷延で長期留置に
> なった症例に時々みられます。
> 吸引時、カニューレ内にキシロカインスプレーを撒布している
> 症例では、より顕著にあらわれます。
> チューブを割いてみると、べっこうあめのような
> とても硬い痂皮のようになっています。
> そして、その付着物は非常にキュルキュルしてすべりが悪く、
> こうなるとサクションチューブがなかなか入っていきません。
> 中を綿棒で掃除したい衝動に駆られます(^_^;)……
> 入りが悪いと、Nsはますますキシロカインスプレーを撒きまくり、
> いたちごっことなります。
>
> これらの付着物を排除し、常に有効な気管内吸引を
> 行うには、(定期的ではないにしても)チューブの交換が
> 最も効果的でしょう。挿管されていても、有効な気道確保が
> 常になされているとは限らないという認識が必要です。
> ただ、「全例○日ごとに交換」という取り決めは、
> あまり意味がないように思います(当科でも取り決めはありません)。

気管チューブの内腔の分泌物固形化は加温加湿器の設定が低く、加湿状態が悪いために起こることが殆どです。
当センターICUでは加温加湿器はFisher & Paykel社のMR730(回路内熱線あり)で患者口元温を39度、Chamber温を41度(ダイアル+2)に設定しています。
wet caseでも気管チューブ内の分泌物の固形化はまったく見られません。サクションチューブ(閉鎖式)もスムーズに入ります。
気管内チューブ内の分泌物の固形化が起こっているということはその末梢の気管の粘膜や線毛がかなり障害を受けている可能性があります。サクションチューブが入りやすいか否かの問題より、その下の気管粘膜にもっと大きな問題が隠れていると思います。


From: "和田浄史"
To: <CCN@koto.kpu-m.ac.jp>
Subject: [CCN:02576] Re: [CCN:02575] Re: RE: 気管切開と感染
Date: Sat, 10 Mar 2001 20:21:12 +0900

和田浄史@川崎協同病院外科 です。

宮尾先生ありがとうございました。
私事で恐縮ですが、先日某結婚披露パーティで先生とご一緒したのですが、あまりにも畏れ多くてご挨拶も申し上げられませんでした。

チューブ内のハナクソ化には2種類あると思います。
 
 1つは、橋本先生もおっしゃっておられた、キシロカインスプレーによる固形物の固着です。
配合されているマクロゴール400という物質が関与している可能性があります。
これは、いわゆる痰のハナクソ化とは異なり、適切に加温加湿をしても、防ぐことができません。ただ、これはキシロカインスプレーを使わないことで簡単に解決できますが。

 もう1つは、宮尾先生のおっしゃる、不適切な加温加湿に伴うハナクソ化です。
宮尾先生のお書きになった1995年のLiSAの論文は私も大変興味深く読ませていただきました。
 きちんと加湿されていても、加温が不十分で気道内で加温されるようでは、相対的に湿度が低下し、気道から水分を奪います。したがって、肺炎等で38〜40℃の発熱をきたしている症例ではなおのこと、相当高温でなければ気道の水分は奪われます。
ハナクソ化をきたしている症例では、十分高温のガスを吸入して気道内で結露させ、そのために体が得た熱は、積極的にクーリングをして体表から逃がす。
つまり、熱の入り口を気道に、出口を体表に設定した熱の流れをつくれば、吸入気が気道から水分を奪うことはないと考えられます。
気道浄化が必要となるような呼吸器感染症ではしばしば高熱をきたすので、吸入気より気道の方が高温になってしまうケースもままある
と思います。
発熱をきたしている症例でのガスの温度設定には、より細心の注意が必要だと思います。


From: "satoshi hirose"
To: <CCN@koto.kpu-m.ac.jp>
Subject: [CCN:02596] RE: 気管切開と感染
Date: Wed, 21 Mar 2001 17:16:26 +0900

広瀬聡@諏訪赤十字病院心臓血管外科です。

> どうしても必要なときは、
> VILZON SPRAY ビルゾンスプレー(シリコーンオイルスプレー)
> 富士システムズ株式会社 
> を使っています。

当院でもキシロカインスプレーを無意味に使っている場合があったので、さっそくこのスプレーを試してみようと思ったのですが、メーカーから医療用ではありませんと言われてしまいました。
垂れるほど付けるわけではないのでしょうが、少量でも気管粘膜に触れる可能性も考えられ、導入を躊躇している状態です。

リスクをどのように評価し使用しているのか、教えていただければ幸いです。
また、その他の潤滑剤を使われている方がありましたら、教えてください。


From: "和田 浄史"
To: <CCN@koto.kpu-m.ac.jp>
Subject: [CCN:02597] Re: [CCN:02596] RE: 気管切開と感染
Date: Wed, 21 Mar 2001 18:53:36 +0900

和田浄史@川崎協同病院外科 です。

 シリコンオイルは、相当広い領域の医療器具に用いられています。例えば、一般に使われている血管内留置カニューレ(サーフロやジェルコやインサイトなど)の内筒・外筒にも塗布されており、血管内皮や血液に直接暴露されます。
製品によっては、気管内チューブの外に塗布してある製品もあるようです。
 しかし、シリコンオイル自体は生体に対する毒性は非常に低く、Vilzon sprayも、シリコンオイルのmedical gradeと同等のオイルです。
もっともシリコンオイル自体は「医薬品」ではありませんが…。
 また気管内吸引では、気管内に直接噴霧するのではなく、ごく薄くサクションチューブに噴霧するだけであり、気管粘膜と接触こそしますが、その生体への影響はほとんどありません。