話題0535 甲状腺機能亢進症と肝不全・凝固障害


From: "早川峰司"
Sent: Wed, 1 Sep 2004 21:49:39
Subject: [ccn:04930]Re: 甲状腺機能亢進症と肝障害・凝固異常


早川峰司@北海道大学病院 救急部です。
皆様のお知恵を拝借させてください。

無治療の甲状腺機能亢進症の患者です。
意識障害と頻脈でQQ搬入となりました。
甲状腺機能亢進症を疑わせる外見でした。
生来健康(?)でほとんど病院にはかかっていなかったとのことですので、いつからのものかは分かりません。
意識障害は低血糖でした。頻脈は心房粗動で除細動で戻りました。
血液検査にて、 T3・T4の上昇、TSHの低下はとりあえず把握できています。
他の細かな甲状腺関連の検査は結果待ちです。
血小板:8万、PT:20%、Fib:100、T-Bil:5と、血小板、凝固系、肝機能の異常を認めておりました。
AST/ALTは正常範囲内です。
心機能に大きな問題はありません。
CTにて胸腹水と、肝のまだらな造影、脾臓の腫大を認めております。
実は研修医のころに全く同じような症例を経験しておりますが、そのときも原因は分からずに、死亡されております。
検索をかけても何も引っかからなかったことを覚えています。
今回も、めぼしいものは見つけられておりません。
この甲状腺機能亢進症と肝障害・凝固異常に関連はあるのでしょうか?

From: "河村宜克"
Sent: Thu, 02 Sep 2004 00:19:27
Subject:[ccn:04933] Re: 甲状腺機能亢進症と肝障害・凝固異常


皆様、こんにちは。河村@関門医療センターです。
早川先生、こんにちは。
甲状腺機能更新症と肝障害・凝固異常の症例ですが、少し前に同じような症例を経験しました。
この患者さんは更に心不全も合併しており重篤な状況でしたが救命できました。
この患者さんでも肝障害・凝固異常を合併していました。
肝障害については急性心不全(レントゲン上肺うっ血著明、CTR 80%)による ”うっ血肝”と考えましたが、凝固異常についてはAT投与、抗凝固療法、補充療法で改善したものの、DICとなる”基礎疾患”は認められず、結局原因は謎のままでした。
甲状腺機能亢進が関与していると思うのですが、どう結びつけて良いのか私もわかりませんでした。
”サイトカイン等の関与”で括ってしまうしかないのでしょうか。
私も興味があります。
是非、詳しい先生方のコメントをお聞きしたいです。
全くお役に立たないレスで申し訳ございません。

From: "早川 峰司"
Sent:Thu, 2 Sep 2004 00:18:41
Subject: [ccn:04934]Re: 甲状腺機能亢進症と肝障害・凝固異常


心機能に関しての追加ですが、 CVPは高く 20以上.
ただし、severe TRがあります。
エコー上、壁運動は良好。
このsevere TRが慢性に経過して肝障害を来たしたのと考え方も成り立つかと思いますが、 AST/ALTの上昇は全く認めておりません。

From: "田中竜馬 "
Sent: Wed, 01 Sep 2004 09:52:24
Subject: [ccn:04935] Re: 甲状腺機能亢進症と肝障害・凝固異常


甲状腺機能亢進症に伴う肝機能障害では通常ALPの上昇が見られ,重傷例では黄疸も認めます。
原因はまだ良く判っていないのですがミトコンドリアの機能障害によるという説があります。
また甲状腺機能亢進症の治療薬であるプロピロチオウラシルも肝障害をきたします。

From: "早川 峰司"
Sent: Thu, 2 Sep 2004 01:06:34
Subject:[ccn:04936] Re: 甲状腺機能亢進症と肝障害・凝固異常


田中竜馬先生、返信ありがとうございます。

文献でratレベルのものが引っかかっていました。
凝固系の変動に関しては如何なものでしょうか?

> また甲状腺機能亢進症の治療薬であるプロピロチオウラシルも肝障害をきたします。

本症例は無治療ですので、この可能性はないかと思います。

From: "早川 峰司"
Sent:Thu, 2 Sep 2004 12:33:20
Subject: [ccn:04937]Re: 甲状腺機能亢進症と肝障害・凝固異常


自己レスで、申し訳ありません。
肝の血流エコーを行ったところ門脈血流が極度に低下していることが明らかになりました。
一応、求肝性で、A−Pシャントはないようです。
本症例の病態について、以下のように考えております。

1 甲状腺機能亢進症があり、心不全の進行
2 右室拡大とT弁の弁輪拡大
3 TRの進行
4 慢性のうっ血肝
5 長年の進行から肝硬変(画像上は明確ではないですが)
6 AST/ALTの上昇のない凝固能異常とBilの上昇

これで、一連の病態の流れを説明できるかと思っています。
治療はとにかく、水引を開始しています。
水を引いたところで、TRや肝機能障害が改善するか否かが興味の的ですが・・・。

From: "臼井 章浩"
Sent: Thu, 2 Sep 2004 13:20:50
Subject: [ccn:04938]Re: 甲状腺機能亢進症と肝障害・凝固異常


早川先生、ご無沙汰してます。臼井@市立札幌です。

> 本症例の病態について、

ここら辺の流れはhyperkinetic heart failureによる肺高血圧症に伴うものではないでしょうか?
心エコーにて壁運動良好とのことですし。
循環管理しながら、甲状腺機能の改善に伴って徐々に病態は改善するように思います。
がんばってください。

From: "田中竜馬"
Sent: Thu, 02 Sep 2004 00:09:32
Subject: [ccn:04940]Re: 甲状腺機能亢進症と肝障害・凝固異常


早川先生,興味深い症例の提示ありがとうございます。

血小板減少は甲状腺機能亢進症ではよく見られますが,血小板のturn-overの亢進によって血小板寿命が短くなるのが原因です。
また甲状腺機能亢進症はITPを併発することがあるのが報告されています。
今回の症例とは別に一般的に甲状腺機能亢進症ではhypercoagulable stateになり血栓症のリスクが高くなります。
逆に甲状腺機能低下症では凝固能の低下から頭蓋内出血のリスクが高まります。

甲状腺機能亢進症によるdilated cardiomyopathyは可逆的なので原疾患が治療されればTRも改善されると思われます。
甲状腺機能亢進症では高体温による不感蒸泄の増加,嘔吐や下痢による腸管からの水分の喪失などによりみかけの心不全症状とは逆に血管内のvolumeは低下していることがありますので心不全の治療には注意が必要です。
続報を楽しみにしております。

From: "naka gawa"
Sent: Thu, 02 Sep 2004 07:32:08
Subject: [ccn:04941]Re: 甲状腺機能亢進症と肝障害・凝固異常


中川@岩出山町民病院です。
患者さんの性・年齢・T4/T3/TSH及び来院時の血糖値を教えて頂けませんか。

From: "早川 峰司"
Sent:Fri, 3 Sep 2004 11:34:57
Subject: [ccn:04945]Re: 甲状腺機能亢進症と肝障害・凝固異常


各先生方、返信ありがとうございます。
まずは、お求めの情報から。

患者は50代の女性。
搬入時BSは測定限界以下(簡易式)
FreeT3:17(2.2-4.1)、FreeT4:11.6(0.8-1.67) TSH:0.06(0.35-3.73)
これらに加え、本日
TPO抗体:430(<0.3)、TSHレセプター抗体86(<10)
が明らかとなりました。

甲状腺機能亢進に伴うdilated cardiomyopathyは可逆性であるとの報告は多々ありますが、これが年余にわたり継続した場合、弁輪径の拡大やTRも可逆性なのかというところには疑問が残るところです。
また、同様のことは肝機能にも言えまして、 CT上は誰しもが認める肝硬変像ではないですが、肝硬変と読んでも、否定はできない像と考えます。
少なくとも、脾腫は明確ですし、門脈血流の低下も明らかです。
この形態学的な変化を来たしているかもしれない肝臓が戻るものかというのは大いなる疑問です。
後ほど、CTをUPしていただけるように、橋本先生にお送りします。
よろしくお願いします。

From: "橋本悟"
Sent: Fri, 3 Sep 2004 22:19:54
Subject:[ccn:04950]Re: 甲状腺機能亢進症と肝障害・凝固異常

本日、早川先生よりメールをいただき初めて発覚しましたが8/20以来、一部の登録者(なんと私も含め)にメールが全く届いていないことがわかりました。
と言うわけで私もよく意識していませんがおそらくccn4930に関する話題のCT画像をアップしました。

http://koto8.kpu-m.ac.jp/~ccn3/hayakawa3/
(※ID とpasswordが必要です)

不具合についてはできるかぎりはやく修復します。

From: "naka gawa"
Sent:Wed, 08 Sep 2004 16:44:46
Subject: [ccn:04962] Re: 甲状腺機能亢進症と肝障害・凝固異常

御忙しい中情報ありがとうございます。
ちょっと遅めの夏休み(WRCinJAPAN!)でお返事遅れました。
少なくともGD(甲状腺機能亢進症)であることは間違いないわけですね。
ただTSHが0.06と高すぎるのがよく判りません。
再検してみては如何でしょうか。
(旧世代のキットでも測定感度以下になるはず)
今回の症例がいわゆる甲状腺クリーゼに近い状態であったとしたらいろいろ起きていることも説明がつかないわけではないとは思われます。
ただdilated cardiomyopathyや弁輪径の拡大・TR がGDのみによるものとすれば、それは相当な期間甲状腺機能が高い状態にあった可能性が考えられます。
自験例としては、GDの治療を中途中断した引き篭もりの方とか精神分裂病合併例で長期放置されていた場合等があります。
過去の病歴・通院暦など判るといいのですが。
心機能の可逆性について現段階では予測するのは難しいと思われますとりあえずヨード・抗甲状腺剤で、βブロッカーは提供して頂いた情報からだと判断に悩みそうですね。
GD→慢性心不全→うっ血肝→肝硬変、というストーリーは全くないとは言い切れませんが、甲状腺ホルモン高値が原因でそこまで肝機能が悪化するんだったら、それに起因する他のイベント(Af→心不全、相当な体重減少など)が先に起こってそうな気はします。
それではまた。

From: " 早川 峰司"
Sent: Thu, 9 Sep 2004 08:50:27
Subject: [ccn:04963]Re: 甲状腺機能亢進症と肝障害・凝固異常


御返信ありがとうございます。
TSHに関しては再検をかけてみますが、現時点でT3、T4もだいぶ低下してきております。
通院歴はなく、既往も風邪程度です。
ただ、顔つきは甲状腺機能亢進症に典型的でした。
つまり、外見に変化を来たすぐらい長期間経過していたのだと思われます
また、これはあくまでも推測ですが、本患者で著名な心不全症状を呈さなかったのは甲状腺機能亢進症のなせる業かと思っています。
もともと、痩せ型の人だったらしく、著名な体重減少はなかったとのことですが、標準体重よりは明らかに軽いです。
ただ、胸腹水貯留や下肢の軽度の浮腫もありましたので、これらの発生時期も体重推移に影響を与えていたのかもしれません。

From: "早川 峰司"
Sent: Tue, 26 Oct 2004 08:30:07
Subject: [ccn:05033]【結果報告】甲状腺機能亢進症と肝不全・凝固障害


皆様に御相談させていただいた甲状腺機能亢進症と肝不全・凝固障害の症例の治療結果の報告です。
甲状腺機能は正常化。TRも改善。
Afに対してはアブレーションとペースメーカーで対応といった内科的治療を継続し、懸念であった肝機能・凝固能も改善いたしました。
高ビリルビン・凝固能異常は甲状腺機能亢進症の直接的な影響だったのか、慢性のうっ血肝の影響だったのか、はっきりとは分かりませんでしたが。
色々と御指導ありがとうございました。