話題0580 高度のMRSA腸炎


From: "早川 峰司"
Sent:2005/06/12 (日) 23:39
Subject:[ccn:05375] 高度のMRSA腸炎


早川@北大QQです.

皆様,誰しもMRSA腸炎の症例はご経験があると思います.

その中でも,
高度の下痢を長期間呈する症例があるかと思います.
例えば,1日数リットルの下痢を数日間以上もといった具合に.

そのような症例に対し,
皆様はどのような治療をされていますでしょうか?
電解質や水分バランスの調整,
バンコマイシンの内服は当然のこととして,
他に何か良い治療法があるものでしょうか?

経験則的なものでも結構です.
ご教授いただければ幸いです.

From: "奥村徹"
Sent: 2005/06/13 (月) 12:04
Subject: [ccn:05376] 高度のMRSA腸炎???


早川先生

奥村@順天堂救急です。
感染症を専門とする者の間では、
MRSA腸炎は、その存在そのものが疑問視されています。
以前調べた時、日本以外からは症例報告が出ていません。

むしろ、MRSA腸炎と言われる偽膜性腸炎の症例が多いのでは、
とも考えられています。
CDトキシンA、CDトキシンBは確認されてますか?

バンコマイシン内服は、VREを生むので、
FIRST CHOICEは、メトロニダゾールになります。

From: "早川 峰司"
Sent:2005/06/13 (月) 14:12
Subject: [ccn:05377] 高度のMRSA腸炎???


偽膜性腸炎の場合はメトロニダゾールが
FIRST CHOICEということは了解しております。

偽膜性腸炎とMRSA腸炎の混乱も、
理解できているつもりではありますが、
その中でも、
MRSAが原因と考えられる
難治性の下痢は見られると思いますが如何でしょうか。

From: "奥村徹"
Sent:2005/06/14 (火) 0:41
Subject:[ccn:05379] MRSA腸炎


早川先生、皆様

実際の臨床例を見てみますと、
たまたまMRSAが便中より出てきている
偽膜性腸炎例がほとんどの印象があります。

皆さん、如何でしょうか?

早川先生、便のグラム染色でも、
Staph aureus様のものが数多く見られますか?

From: "晋山直樹"
Sent:2005/06/14 (火) 1:37
Subject:[ccn:05380] Re: 高度のMRSA腸炎???


早川先生、奥村先生、こんばんわ。

神戸市立中央市民病院・外科の晋山です。
(先月まで、大阪大学高度救命救急センター勤務で、今月から勤務先が変
わりました。)

あくまで私見ですが。
まず、MRSAが原因の下痢と診断するには、どうしたらいいのでしょうか。

MRSAに限らず、S.aureusが原因となる消化器疾患は、食中毒による急性胃
腸炎ぐらいしか聞いた事がありません。
それも嘔吐が主体で、難治性の下痢は少ないと思います。

そもそも、腸内細菌とは言えないS.aureusが難治性の下痢を引き起こすと
なると、上気道経由や経口で、胃酸を巧く掻い潜り(胃全摘でもしてない
と、考えにくいですが)、何らかの原因で損傷を受けた腸管内で大増殖し
てenterotoxinを産生しまくって、他の腸内細菌や嫌気性菌は死滅して
S.aureusを抑えることが出来ず・・・という状況でしょうか。

重症患者で、胃酸が少なく、かつ抗生剤を使いまくった挙句の果ての下痢
とすれば考えられなくも無いですが、教科書的には偽膜性腸炎であること
が多いとされ(私の使っているReese and Betts'のtextbookには、MRSA腸
炎なる言葉すらありません)、むしろ自然だと思います。

かつて経験した症例では、やはり抗生剤使用歴のある患者の難治性下痢で、
便のグラム染色ではGPC-cluster,GNR,多数の白血球などが見え、培養では
MRSAとP.aeruginosaが生えて、CD toxinは陰性で、でも内視鏡でS状結腸
に偽膜形成があった、という症例もありました。

偽膜性腸炎でもCD toxinが陰性となることはよくありますが、偽膜形成を
確認した場合はC.difficileが原因となるこことが殆どだとされています
(特異度90%以上だったと記憶しています)

偽膜性腸炎を引き起こす状況では、便にMRSAがコンタミしてもおかしくな
いですよね。もちろん培養では生えてきますよね。
重症患者だとしたら、循環不全による腸管虚血などは無いでしょうか。
大腸内視鏡検査をやってみてはいかがでしょうか。

From: "Susumu Yamashita"
Sent:2005/06/14 (火) 8:32
Subject: [ccn:05381] Re: 高度のMRSA腸炎???


奥村先生ご無沙汰しております。
早川先生、晋山先生こんにちは。
山下@山口大学先進救急医療センターです。

数年前に某細菌学講座の先生のミニセミナーで、MRSA腸炎について一般的に
は抗生剤の濫用による偽膜性腸炎だとされていると話された上で、それでもMR
SA腸炎という病態が存在する可能性があるということを話されていました。
診断については、消化管内にMRSAがいなくても血管内の毒素によって下痢を
引き起こしている可能性もあるといわれていました。O−157ではベロ毒素を血
管内注入すると出血性下痢を起こすそうで、同じようなメカニズムが存在するの
ではないかというお話でしたが、動物実験ではMRSA毒素を血管内注入しても
下痢は起きないそうです。
アメリカではMRSA感染に伴う下痢がほとんど見られないことについても菌株
が違うということで説明ができるといわれていました。
お話は、やはり日本国内でMRSA感染にともなう強烈な下痢が多すぎるという
事実に基づいて、あくまでも「可能性」のお話をされていたものと受けとめてい
ますが、その後、下痢を引き起こすような毒素が検出されたという話は聞いてお
りませんので、やはりMRSA腸炎という病名を使うのは難しいのでしょうか。

From: "こばやし あつこ"
Sent:2005/06/14 (火) 10:45
Subject:[ccn:05382] ccn:05381: 高度のMRSA腸炎


済生会吹田病院 ICU 小林です

話題の症例と同様のケースかどうかは不明ですが、最近、当院でもMRSA腸炎による
TSSと思われる症例を経験しました
この症例は大量のMRSAが下痢便が検出され、TSS様の症状(カテコラミン不応性
ショック、DIC、重症のARDS)を呈して下痢を起こしてから1日の経過、ICUに入室し
てから数時間の経過で不幸な転帰をたどられました。
便から検出されたMRSAはTSST-1を産生しておりました
病理解剖所見で食道から直腸に至るまで後半な出血斑が見られましたが、偽膜形成は
みつかっておりません
血液からはMRSAは検出されませんでした
これらの所見から腸管で異常繁殖したMRSAの毒素TSST1がTSSを起こし、このような転帰になったと考
えております
CD抗原陰性、偽膜形成なしで、MRSAが便から大量に検出される症例をたまに見かけま

このような症例に関してはエクソトキシンが下痢やその他の症状に寄与しているので
は無いでしょうか?

From: "早川 峰司"
Sent:2005/06/14 (火) 13:14
Subject:[ccn:05383] MRSA腸炎の存在について


皆様こんにちは。
最初、意図した方向は別の方向に進んでいるのですが・・・。
少し、タイトルを変更しました。

今回、御相談したきっかけになった症例は、
小林先生@済生会吹田病院の御提示の症例と同様、
TSS様の症例です。(TSST-1を測定していないので確定ではありませんが)

高度の水溶性の下痢と発熱、末梢血管の拡張を伴った
ショック状態で入床してきました。
下痢(腸管)以外にショックを呈するような感染巣はなく、
下痢による脱水だけでは病態が説明が付かず、
腸管をフォーカスとした感染性のショックであろうと
推測し、型どおりの治療を行いました。
下痢に関しては、MRSAの保菌者であることから
バンコマイシンの内服を行っております。

そうした所、便からはMRSAが検出されました。
(検鏡・培養ともに)
CDチェックは陰性です(問題があるのは知っていますが)
培養でCDは生えてきていません。

ショック状態は程なく改善しましたが、
1日当り2〜4Lの水溶性の下痢が
残存しているという状況です。
もちろん、菌も出つづけています。

過去に経験している
高度な水溶性の下痢で
MRSAが検出されるものは
すべてTSS様の病態を経ています。

腸液が多量にでてくる毒素性の下痢であることから
MRSAによるTSST-1が関与しているのではないかと
考えています。

私自身も
便からMRSAが出てMRSA腸炎だと騒いでいるものを
いさめる方ではありますが、
さすがに、この症例にメトロニダゾールで
対応する気にはなりませんが、
皆様如何でしょうか?

From: "早川 峰司"
Sent: 2005/06/14 (火) 13:27
Subject:[ccn:05384] 高度の下痢への対応


御相談した内容が、
意図した所からそれてしまったので、
タイトルを別にして立て直してみました。

1日数Lの水溶性の急性の下痢を伴う場合、
多くの場合、偽膜性腸炎や話題のMRSA腸炎を考えると思います。

偽膜性腸炎の原因となるような抗生剤は
止めるか、もしくは臨床的な理由で他剤に変更するかし、
(今回の症例ではとめています)
内服でバンコマイシンを開始しています。

さて、下痢が収まる傾向がありません。
便からは未だにMRSAが出てきます。
仮に偽膜性腸炎であったとしても
基本的な治療ははずしていないと思います。
腸管の虚血を示唆するような所見はありませんし、
当然、粘血便もありません。血行動態も安定です。
(下痢に負けない補液が必要ですが)
便培養は繰り返し出していますが、
MRSA以外には問題となるような菌は出てきません。

さて、皆様なら、いかがされるでしょうか?

From: "こばやし あつこ"
Sent: 2005/06/14 (火) 13:57
Subject: [ccn:05385] Re: MRSA腸炎の存在について


小林@済生会吹田病院です

TSSの治療はもちろんVCM 静脈内投与ですが、先生が呈示されたような症例や下痢だ
けが続いて患者の状態を悪化させている場合、SDDという意味合いでVCM経口投与もあ
りでは無いでしょうか?

SDDの有効性はICMの2003年のreviewでも書かれています
van Saene, H. K., A. J. Petros, et al. (2003). "All great truths are
iconoclastic: selective decontamination of the digestive tract moves from
heresy to level 1 truth." Intensive Care Med 29(5): 677-90.
大量の下痢便が患者の状態を悪くしている場合、VCM経口投与が著効する場合があり
ます
もちろん、症例を選んで投与しなければVREやVRSAを蔓延させる温床になりますの
で、適応に関しては十分な考慮が必要です

From: "柳 秀高"
Sent: 2005/06/14 (火) 21:29
Subject: [ccn:05386] Re: MRSA腸炎の存在について


東海大学総合内科の柳と申します。

このような重症例は私も時々診ますが、
「MRSAによる腸炎」でTSS様になっている
のではなく、
TSSに高度の下痢が合併することはよくあるので、
(教科書にも記載されています)
このような状況はまさにTSSそのもの、という理解で
いいと思います。

下痢の直接の原因としてはTSST-1やその他の
Enterotoxinが関与しているのかも知れません。

連鎖球菌によるTSS(血培陽性率60%程度)と異なり、
ブドウ球菌によるTSSは
血液培養の陽性率も高くなく(5%程度)、診断は臨床診断です。
しかし、血液培養は如何だったでしょうか?
TSST-1も確定診断に必須ではありません。

皮膚のDesquamationなどは出てきていませんか?

初期の治療はMRSAが原因と思われる場合にはVCMの静脈内投与に加え
Toxinの産生を抑制するためにCLDMでよいと思われます。さらに
IVIGなども候補に挙がるかも知れません。

ショックから離脱できているのに下痢が長引いているということの
ようなので、皆さんがおっしゃるように虚血性腸炎や、
CDチェックの感度が低いことを考えると偽膜性腸炎
の可能性もあるように感じます。偽膜性腸炎の可能性もあり、
下部消化管内視鏡が出来るほどには状態がよくないのならば
(もしくは消化器内科医が検査に賛成しない場合など)
VCMを経腸的にも投与したくなります。

偽膜性腸炎ならばメトロニダゾールは経静脈的投与でもVCMと
異なり、腸炎に有効ですが、日本にはこれがないのが残念です。

From: "望月弘彦"
Sent:2005/06/14 (火) 23:44
Subject:[ccn:05389] Re: MRSA腸炎の存在について


早川先生。 横須賀北部共済病院の望月と申します。

腸炎後?の下痢でお困りと言うことで、
アイディアを書き込みます。

腸炎や長期の絶食後は腸管粘膜の浮腫や絨毛の平低下がおこるといわれています。
そういった病態の時、腸管内にグルタミンを投与することで
腸管粘膜の状態を改善できると思います。
薬品ではなくて食品ですが、グルタミンにファイバーとオリゴ糖を配合した
GFOという製品があり、時々利用しています。
既製品ではなく院内で自作しているところもあるようです。

・投与法
グルタミン 〜 マーズレンSまたはグルミンS  6.7g
 (肝不全や腎不全があるときは投与量を減量する)
ファイバー 〜 ヘルッシュファイバー 25g(20cc)
オリゴ糖  〜 メイ・オリゴW  2.5g
あらかじめ微温湯40ccにオリゴ糖を溶かしておく。お湯の温度にもよるが、
5〜10分で溶ける。その中に、グルタミンを入れて溶かし、
ファイバーも入れて全てを攪拌する。
これを、注入し、最後に通し水を10〜20ccほど注入する。

できれば、ベッドサイドでS状結腸まででもCFでのぞければはっきりすると思いま
す。
下痢をしている状態ですので、前処置も不要ですし、
S状結腸までであれば、侵襲や痛みも大きくないと思います。
また、エコーや腹部X線で腸管の浮腫の状態はいかがでしょうか?

From: "早川 峰司"
Sent:2005/06/17 (金) 13:28
Subject:[ccn:05396] MRSA腸炎の存在について


柳先生ご返事ありがとうございます。

TSSで高度の下痢が出ることは存じ上げていますが、
今回の症例では腸管以外に明らかなMRSAの感染巣がなかったのです。
ですから、「TSS様」と書かせていただきました。
肺も腹腔内も血液もです。レトロに見てもそうです。

皮膚所見に関しては
下痢前の発疹やその後のDesquamationの明らかな物は
確認できませんでした。
ただ、下痢の症状はEnterotoxinが関与している病態を示唆する物です。

本院でのCD検査を再確認しましたが、
CDチェックとは呼ばれていますが、
ラテックス凝集法の感度の悪い物ではなく
CDトキシンAを測定する物でした。
Bは測定しておりません。

さて、これは皆様に教えていただきたいのですが、
偽膜性腸炎(MRSA腸炎かもしれません)に対し、
メトロニダゾールの使用を御示唆いただいていますが、
純粋に効果面からの判定で、
バンコマイシンよりもメトロニダゾールの方が優れているという
報告があるのでしょうか?
私の理解では、耐性菌の問題で偽膜性腸炎に対しては、
ファーストチョイスはメトロニダゾール。
効果がなければバンコマイシン。
と記憶しているのですが。

如何でしょうか。

From: "早川 峰司"
Sent: 2005/06/17 (金) 13:33
Subject:[ccn:05397] Re: MRSA腸炎の存在について


望月、御提案ありがとうございます。

GFOですが、
GのみよりもFOを加えることで、
臨床的な反応性はいかがな物でしょうか?
Gのみはその簡便性からよくやりますが、
知識として知ってはいても
FOを加えてGFOというのは
行ったことがありません。

実際に行ってみての御感想をお教え下さい。

今回の質問のきっかけとなった患者は
先日、内科に転科となって行きました。