ホーム > 臓器移植について > 肝臓移植

肝臓移植

肝臓移植について

はじめに

生体部分肝移植術は、1988年12月にブラジルのRaiaらにより胆道閉鎖症(BA)に対して世界で初めて行われ、成功例では1989年7月に熊本大学からオ−ストラリアに渡ったBA患児に対して母親をドナーとして行われたのが最初で、本邦では1989年11月島根医科大学で、肝疾患末期状態のBA患児に対して最初に施行されました。

以来現在に至るまでに、その数は年間500例、総数5000例を越え、累積5年生存率は約80%と良好な成績を挙げています。現在欧米においては、脳死体をドナーとする臓器移植が日常臨床として行われ、その症例数の増加に伴い慢性的なドナー不足となっています。本邦においては、1997年より脳死移植が行われるようになり、2010年7月の法改正以降、ドナー数の増加がみられていますが、依然として、生体部分肝移植術は重要な役割を持っているのが現状です。

肝移植医療は、肝疾患末期状態の患者さんに対する治療の一選択肢であり、「ある個人の福祉と幸福を強化する」という医療行為である点においては、なんら特殊な医療ではありません。その一方で肝移植医療は、より多くの各方面のスタッフの協力と、そして緊密なチームワークがなければ決して行ってはならない医療行為であり、個々の患者さんに対してはそれぞれの状況に応じた対応が必要なのは論を待たず、このホームページ自身随時改訂改良されるべきものであることを最後につけ加えます。

参考文献:日本移植学会倫理指針

ページの先頭へ

肝臓移植の歴史

臨床における肝移植は1963年に、アメリカではじめて肝臓移植が行われ、1967年に初の成功例がでました。これは、コロラド州デンバーというところで、スターツルという外科医がおこなったものです。他の臓器移植同様、肝臓移植も、いろんな周辺技術や知識の進歩によって推進されてきました。その大きな要因は、移植後の免疫抑制剤の開発、もう一つは、臓器の保存技術です。

免疫抑制剤は、1980年代になってサイクロスポリン、1990年代になってタクロリムス、という、現在も主流である二つの薬剤の開発普及が、肝臓を含めた臓器移植を大きく推進しました。保存技術では1970年代に開発された、ウイスコンシン大学保存液(UW液)は2-4度の冷保存によって、肝臓では12-24時間の保存を可能としました。

表1. 肝臓移植の歴史

1963年 世界初の肝移植 Starzl TE(USA)
1964年 日本初の肝移植(異所性肝移植) 千葉大学
1968年 ヨーロッパ初の肝移植 Calne R(UK)
1988年 世界初の生体部分肝移植 Raia S(Brazil)
1989年 世界初の成体肝移植成功例 Strong RW(Australia)
1989年 日本初の生体部分肝移植 島根医科大学
1990年 日本初の生体肝移植成功例 京都大学、信州大学
1995年 Monosegment liver Tx Strong RW(Australia)
1999年 日本初の脳死ドナー肝移植 信州大学

国内では島根医大で初めて生体肝移植行われました。脳死ドナー肝移植については1997年に臓器移植法が制定され、1999年にこの法律に基づく脳死肝移植が行われ、年間10例程度にとどまっていたのが、2010年7月の法改正以降少しずつ増加しているとはいえ、まだ十分とはいえません。日本では生体肝移植が1989年初例以降肝移植の一般的形態となり、年間に400-500例行われています。生体肝移植がはじめられた1990年代初めは小児の胆道閉鎖症症例が多く、親から子供への移植が一般的でしたが、1994年に信州大学で成人への生体肝移植がはじめて行われ、1990年代の終わり頃から急速に成人への生体肝移植が増加しており、最近では18歳前後で分けると、小児1対成人3程度の割合です。

ページの先頭へ

肝移植適応疾患

1.適応疾患(生体肝移植ガイドラインより)

(1)肝移植治療がその必要性、安全性、及び効果において他の治療よりも優位であると判断される場合とする。

  • 劇症肝炎(劇症肝不全、遅発性肝不全を含む)
  • 胆道閉鎖症
  • 先天性肝・胆道疾患
  • 先天性代謝異常症
  • バッド・キアリ症候群
  • 原発性胆汁性肝硬変
  • 原発性硬化性胆管炎
  • 二次性胆汁性肝硬変
  • 進行性肝内胆汁うっ滞
  • ウイルス性肝硬変
  • その他の肝硬変
  • 移植肝不全
  • 肝細胞癌
  • 肝芽腫
  • 多発性肝嚢胞
  • 肝移植の他に治療法がないすべての疾患

(2)以下の疾患または状態を伴わないこととする。

  • 制御不能の肝胆道系以外の活動性感染症
  • 制御不能の肝胆道系以外の悪性腫瘍
  • 肝移植治療の安全性の大きな妨げとなる他臓器疾患

上記のようないろいろな状態で肝臓移植が行われますが、肝臓移植を施行すると施行しないときより危険が大きい、と言う場合には移植を断念しないといけない、あるいは延期しないといけない、というような状態があります。年齢については原則として70歳未満の方が手術の対象と考えています。

ページの先頭へ

世界における肝移植

現在肝移植はアメリカで年間6000-7000例、ヨーロッパで年間4000-5000例行われていますが、その大半が脳死ドナー肝移植です。生体肝移植はアメリカで200-250例、ヨーロッパで150例前後です。しかしながら諸外国においても移植を待機されている患者数から考えてドナー不足であることには変わりなく、自国の患者さんに手術を受けていただくことを優先するという方針が打ち出されており、2008年5月には、トルコのイスタンブールで、世界保健機関(WHO)と世界移植学会が合同で会議を開き「自国民の臓器移植は、原則として自国民の臓器を用いておこなうようにしよう」という、イスタンブール宣言というものを出しました。移植商業主義、臓器売買などを禁止することもその大きな柱です。

これが出されて以降、諸外国では自国民のために臓器を使おうと、外国人への移植を制限する方向がでてきています。一方、アメリカではまだ一定の割合で外国人の移植も受け入れていますが、長い待機期間、高額な費用など、一般的医療とは言えない状態です。外国での臓器移植は、あまり現実的ではありません。

ページの先頭へ

本邦における肝移植

日本肝移植研究会からの報告によると2009年12月までに68施設で5653例の生体肝移植と68例の脳死ドナー肝移植(移植総数5721例)が行われました。その年次推移と初回移植の原疾患を(図1、2)に、全体の生存率を(図3)に示します。

詳しくは下記の報告をご参照ください。

http://www.asas.or.jp/jst/pdf/reports/43-1_p045-055.pdf

図1,2

(2010.10.12肝移植症例登録報告より)

図3

(2010.10.12肝移植症例登録報告より)

ページの先頭へ

生体肝移植について

生体肝移植では、ドナーより提供して頂いた部分肝をレシピエント移植するというものですが、肝臓は、区域の境目でのみ安全に分けることができるという構造になっています。また、ドナーから移植肝を切除後、一定の割合以上の肝臓がドナーにも残らないとドナーが危険になります。そこで、あらかじめドナーの肝臓の大きさをCTという検査で推定し、いただく肝臓の大きさを計測して、安全な手術が行えるよう評価します。ドナーでのCT検査で、どの部分をきりとるとどの程度の大きさの肝臓をいただけてドナーにどれくらい残るか、が推定できるわけです。部分肝移植で用意される肝臓のうち、最も小さい区分は、左外側区域といわれる左の端の部分で、肝臓全体の約4分の1、となります(図4-a)。

図4

次に大きい区分は、肝臓の左側約3分の1をいただく、左葉(図4-b)、いちばん大きいのが、右葉と言われる、肝臓の右約半分ないし3分の2をいただくものです(図4-c)。レシピエントの状況によって必要な移植肝臓の大きさには差があり、大きい人には大きい肝臓が必要になります。ドナーの安全性のためには最低でも肝臓全体の約30%以上が残るようなドナー手術を行うようにしており、逆に残る肝臓がこれ以下と予測されるときには、その方をドナーとしての移植が難しいという判断になります。

では、レシピエントに必要な肝臓の大きさはというと、下限が、レシピエント体重の0.7%程度とされていますが、レシピエントの状態によっても左右されるのでこれが必ずしも絶対の条件ではありません。ドナーの体格が小さい場合には、大きな右葉を使っても、レシピエント体重の0.7%以上という大きな肝臓をいただくことができない場合があり、そのときには、レシピエントの状態も勘案しながら対応を決定することになります。ドナーの安全も非常に大切であり、あまりにドナーに残る肝臓が小さすぎるときには、生体肝移植の実施を断念せざるを得ないことがあります。

1.レシピエントの合併症

肝移植は大手術で、多くの危険性があり、手術中、あるいは術後早期にレシピエントが死亡する可能性も決して無いわけではありません。元気に歩いて入院されたレシピエントが残念ながら不幸な結果となってしまうことも肝移植手術では現実として生じ得ます。レシピエントが早期に亡くなったのに、そのドナーは術後のケアのためにさらに入院を続けなければならない、という非常に厳しい状況が生じることもあります。種々の条件で、症例ごとの危険性は異なりますが、正確に個々の症例での致命的危険度を推測することは困難で、予測できない合併症で命が失われることが皆無ではありません。

2.移植後早期の合併症

生体肝移植を受けられるレシピエントに関する外科手術にまつわる、早い時期に起こる合併症は次の5つに分類されます。

  • 1)出血
  • 2)血栓症
  • 3)胆管合併症
  • 4)感染症
  • 5)拒絶反応

これらの中には、術後非常に早い時期におこるものから、数ヶ月以上たってから生じるものもあります。

血栓症

緊急に再手術(再移植ではありません)が必要となります。日本国内の今までの生体肝移植では1-2%程度とされています。

胆管の合併症

胆汁の漏れは、手術後の早期(1ヶ月以内、多くは2週間以内)に起こることが多く、一方、狭くなること(狭窄)は、数ヶ月以内が多く、時に術後数年経っても起こることがあります。胆管合併症は15%程度の頻度で生じます。治療(再開腹手術、内視鏡(ERCP)処置,PTCDを併用したバルーン拡張術など)により改善しうる可能性はあります。ただし、胆汁漏れが原因となって全身の感染症が引き起こされ、これが致命的になる可能性もあります。

感染症

肝移植を行う必要がある患者さんは、手術前から全身状態が弱っていることが多く、ここに10時間以上かかる手術の影響と、免疫抑制剤という自分の自然な外的防御能を弱める薬剤の使用から、時に手術後2週間程度の早期には、いろんなきっかけで感染症が成立し、そのために亡くなる方もあり、感染症が術後早期での死亡原因の最多を占めます。治療は、基本的には感染の原因を取り除くことですが、抗生物質やカビに効く抗真菌剤などを投与し、さらに免疫抑制剤を減らしたりやめたりして体の抵抗力を維持するような手段もとります。

その他の合併症

このほか、早期の合併症としては、無気肺、全身感染に伴う肺の機能障害などによる呼吸障害も多く、時には長期にわたって気管の中に直接管を入れて人工呼吸器による呼吸管理を必要とする場合もあります。また、手術前から腎臓機能が低下している人も少なくなく、さらに、手術中や術後早期に、種々の原因で腎臓の機能が低下した場合には人工透析を必要とする場合もあります。 拒絶反応も早いものでは術後5日目くらいから生じることもありますが、一般的には2-3週目頃が多いです。

これらには、

  • 1)拒絶反応
  • 2)感染症、
  • 3)血管、胆管の吻合部狭窄
  • 4)原疾患の再発

があります。以下、そのそれぞれについて説明します。

拒絶反応と免疫抑制

肝移植を受けたすべてのレシピエントには、プログラフまたはサイクロスポリン、ステロイド、セルセプトなどの免疫抑制剤を内服する必要があります。これらは免疫力の低下や成長障害、糖尿病、腎障害などの副作用をひきおこすこともある薬剤ですが、主な効果は、移植肝に対する拒絶反応を抑えることです。この薬剤の投与により、レシピエントは感染症に対する抵抗力が弱くなります。ただし、骨髄移植のような無菌室への隔離を必要とするような状態ほどひどくなく、一般病棟で十分管理可能であり、もちろん退院後通常の生活を送る上では何の妨げにもなりません。

サイクロスポリン、プログラフ、ステロイド等にもいくつかの副作用があります。このため、できるだけ少ない投与量で有効にお薬を効かすために、血液の中の薬の濃度を測定したりして個々のレシピエントにあった投与量に調節する工夫をします。移植後の入院中には、採血するたびにこの血中濃度の測定を行います。退院後は、外来受診時にチェックするのみとなります。これらの免疫抑制剤は肝機能をみながら減量していくことが一般的ですが、最終的にはプログラフ1剤だけの少量投与を一生継続していくことになります。ごく一部のレシピエントでは免疫抑制剤を完全に中止しても肝機能に影響がでず、移植された肝臓が自分のものになった(免疫寛容状態といいます)と判断されるケースが時にありますが、原則的には一生服用が必要です。

少ない確率ですが、慢性拒絶反応といって、術後数ヶ月以降に、肝機能が悪化して、特に黄疸が強くなり、通常の拒絶反応の治療が有効でない場合があります。新しい薬も開発されていますが、このような拒絶反応はなかなか制御が難しく、進行して、移植した肝臓の機能が低下し、再移植も考慮せざるを得なくなる場合があります。

免疫抑制剤の長期的副作用

主な免疫抑制剤として現在用いられる、タクロリムス、サイクロスポリンは、薬剤としての副作用を持っています。両者に共通する副作用は多く、腎障害、耐糖能異常(血糖が高くなる)、高脂血症、神経系の異常、高血圧、高カリウム血症、などがその主なものです。腎障害などは、その薬物の血中濃度の程度に左右されますが、神経系の異常など、あまり血中濃度とは相関しないものもあります。また、長期服用することになる薬ですが、長期間の投与で、腎障害や耐糖能異常などが起こってくることもあり、特に経過の長い小児では十分注意する必要があります。

血管、胆管合併症

門脈、肝静脈の血管、および胆管では、数ヵ月から2年くらいの間に、移植手術の時につないだ血管や胆管のつなぎ目が細くなってしまうことがあります。胆管が詰まれば黄疸がでたり熱がでたり肝機能が悪化したりします。血管が細くなってその程度が強いと、肝臓の働き自体に重大な影響を与えることがあります。血管の狭窄は、全体の5%以下、胆管の狭窄は約10%の症例にみられます。これらは、日常の術後の経過観察で、症状や血液検査、超音波検査なども含めて診断し、放射線科、あるいは消化器外科などと共に、その治療にあたることになります。具体的には、狭いところがあれば風船のついたカテーテルを膨らませて広げたり、場合によってはもう一度開腹して再手術をする、というような対応が必要になることがあります。よって、診断治療のために、手術から時間がたっているにもかかわらず、何度か入退院を繰り返すようなことになることがあります。種々の治療によって改善できない場合、再移植を考慮せざるを得ない場合もあります。

原疾患の再発

B型やC型のウイルス性肝硬変、肝臓癌、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、などでは、移植後もある確率でまた同じ病気が移植された肝臓に生じてしまうことがあります。もちろん、その確率が相当高く、かつ重篤である場合には、肝臓移植そのものが妥当でない(有効でない)わけです。

C型の肝硬変では、もとの病気が再発する危険性は決して小さくなく、またそれが移植肝の機能を大きく損なって機能不全に陥らせ、数ヵ月という早期に再移植以外に致命の道が無くなるという事態も数%程度の確率であり得ます(FCH:fibrosing cholestatic hepatitis)。

肝臓癌では、個々の肝臓ガンの進行具合と、肝臓の機能障害双方を勘案して、移植の効果がどの程度期待できるかが違います。原発性胆汁性肝硬変や、原発性硬化性胆管炎でも再発の可能性が5-20%の頻度で報告されていますが、再発してもすぐに肝硬変になって移植肝の機能が無くなってしまうようなことは非常に少ないので、あまり過度に心配する必要はありません。いずれの疾患でも、その特徴を考えて、免疫抑制剤の使い方などで再発がおこりにくいような対応をとり、治療方法を考えます。

国内で脳死肝移植を受けるためには

京都府立医科大学は現在、脳死肝移植実施認定施設です。そのため、脳死肝移植を希望される患者さんは、日本臓器移植ネットワークに登録が可能であり、手配を行っています。 脳死肝移植の登録から移植実施までを説明します。まず、脳死肝移植を希望される患者さんに対し、肝移植適応があるか否かを1-2週間程度入院していただき評価させていただきます。その上で院内適応評価委員会での評価を行った上で適応有りとなれば、日本臓器移植ねとワークへの登録を行います。紹介施設によっては、どうしても来院が必要な場合と、データのやりとりだけでいい場合があります。その後、国内の肝移植適応評価委員会へ送られ、全国一律基準による評価を受けます。

この評価は、適応があるかどうか、緊急度はどうか、ということが中心です。急ぐ順に、9,6,3点という点数がつけられて評価委員会から返事が移植施設に来ます。それに基づいて日本臓器移植ネットワークに登録を行います。このとき、最終的に3万円の登録手数料が必要で、患者さんに直接振り込んでいただくことになります。これをもって登録となりますが、1年待っても肝臓があたらないときは、さらに5000円を払って更新を行います。登録して、実際に肝臓があたるときは、昼とは限りません。真夜中のことも珍しくありません。よって、非常に備えて、携帯電話は、常に話せる状態にしておくことも重要です。コンピューターが優先順に従って、肝臓のあたる順番を決めています。

もし、「あなたに肝臓があたりました」という電話がきたら(優先順に2名までお知らせができます)、それから約1時間以内には、その時受けるか受けないかを1時間以内程度で決めなくてはいけません。というのは、早く決めないと、次の候補の選定が間に合わなくなり、結果的に肝臓が駄目になる、という懸念がありうるからです。もし、肝移植を受ける決断をすれば、出来るだけ早く退院していただき、手術を受けることになります。

ページの先頭へ

肝移植の費用

(1)脳死肝移植

小児、成人を含め、多くの患者は保険診療です。ただ、一部保険が効かない疾患がまだあります。問題になるのが、肝細胞がんの場合です。日本人の多くの肝細胞がんは、肝硬変をベースに生じます。肝硬変では、腹水が貯まる、黄疸がある、脳症がある、といった、肝不全と呼ばれる肝臓の働きが低下した状態で保険診療となりますが、このような肝不全兆候がない場合には保険診療となりません。肝細胞がんが医学的に肝移植対象になるのは、通常の肝切除では切り取れない状態になっている場合が多いわけですが、そのような時に、同時に肝不全兆候がないと、言い換えると、肝臓の働きはまだ大丈夫だが肝癌の治療方法が他にないから、というだけでは保険が効きません。さらに、たとえ肝不全があっても、肝癌が、ある基準以上に進行している場合にも、保険が適用されません。この基準を「ミラノ基準」といいます。(表5)

(2)生体肝移植

脳死肝移植は、登録して待機しますが、その登録料が3万円、1年ごとの更新料が5000円かかり、これは、日本臓器移植ネットワークに振り込むことになります。実際に脳死肝移植を受けるときには、その医療費がかかりますが、基本的に保険診療となっています。ただし、臓器の搬送使用などの実費が請求される場合があります。

肝癌で、生体肝移植が保険適用になる条件は、「肝不全があって、かつ、肝癌がある場合にはこれがミラノ基準を超えない範囲である」ということになります。移植前直近1ヵ月以内のCTなどの画像診断で最終的に判断されることになります。特定疾患や小児慢性特定疾患の適用を受けている病気に対する移植は、肝臓移植がその治療に結びつくときには当然肝臓移植の費用にもその制度が適用されます。また、小児の場合、「育成医療」の公費負担が受けられる場合もありますので、ご相談ください。なお、一般の生命保険での入院給付などは、生体肝移植ドナーでは受けられないことがほとんどです。これは、ドナーで手術をうけることが「その人の病気の治療」という概念にははいらない、ということが基本になっています。

表2.肝臓癌に対する生体肝移植の保険適応

ミラノ基準 肝臓癌が遠隔転移(肝臓外への転移)と血管侵襲(肝臓の大きな血管に噛みこんでいくこと)を認めず、かつ、5㎝以下の固まりが1個、または、複数ある場合は個数が3個以下で、最大径が3㎝以下。

※肝癌に対する生体肝移植は、肝硬変(非代償期)に合併する場合で、左記の「ミラノ基準」にとどまるものに限られています。ただし、移植前に肝癌に対する治療が行われた場合でも、前の治療が行われてから3ヶ月以上が経過し、移植前1ヶ月以内のCTなどの画像診断でこの基準を満たすと確認できた場合には、健康保険が適用される。

ページの先頭へ