京都府立医科大学での小児がん治療

小児がんとは?

急性リンパ性白血病

白血病は不治の病ではありません。

 現在、日本では1年間に2,000人ほどの子どもが小児がん(悪性新生物)になっています。子どもの死因の中で最も多い疾患が小児がんであり、そのうち最も多いものが急性リンパ性白血病です(約600人/年)。急性リンパ性白血病は、化学療法(抗がん剤治療)や造血幹細胞移植(骨髄移植など)といった治療法の目覚ましい進歩により、現在では約80-90%の子どもたちが治る病気となり、不治の病ではなくなりました。我々の施設では、急性リンパ性白血病で命を落とす子どもたちがさらになくなるように、日々の臨床・研究を通じて治療の進歩に携わっています。

白血病は血液細胞ががん化したものです。がん化にはいくつかの遺伝子異常が関わっています。

 子どもが病気にかかったことについて、ご両親は自分たちに原因があるのではないかと深くお悩みになることが多く見受けられます。しかし、子どもが病気になったのは誰のせいでもありません。病気の発症を予測し、予防をするのは非常に困難なことなのです。
 放射線被ばく、遺伝的素因、ごく一部でウイルス感染が原因となりますが、多くの場合、原因は特定できません。しかし、白血病もほかの「がん」と同様に、遺伝子の傷が重なって発症することがわかっています。では「がん」とは一体何でしょうか?人間の体はたくさんの細胞から成り立っており、健康なときには古くなった細胞が新しい細胞と毎日入れ替わっています。しかし、体の中に「がん」細胞ができると、全体の規則を無視して、限りなく増え続けてしまいます。血液の「がん」である白血病では、「がん」化した白血球(白血病細胞)が骨髄(硬い骨の中心にあるスポンジのような部分)の中で異常に増え続けています。もともと骨髄の中では正常の血液細胞(赤血球・白血球・血小板)が作られているのですが、白血病細胞は骨髄に蓄積されて正常な血液細胞を作る妨げとなったり、リンパ節・肝臓・脾臓の中でも増え続けたりするため、血液の異常をはじめとしたさまざまな症状が出てきます。

白血病が人にうつることはありません。

 健康な子どもが白血病の友達と仲良く遊んだから白血病がうつる、ということは絶対にありません。だから、白血病がよい状態(寛解(かんかい)といいます)になった子どもは、幼稚園や学校へ行くなど普通の社会生活に戻れるのです。

症状だけではすぐに白血病とは判断できません。

 白血病では正常な血液細胞を作ることが妨げられるために、発熱・顔色が悪い・出血が止まりにくいなどの症状がみられます。
 しかし、初期では、風邪やその他の子どもによくある病気と区別できないことも多いので、血液検査をしないと症状だけでは白血病かどうかはわかりません。「顔色が悪いけれど、元気に幼稚園や学校に通っていた」というようなケースも見られます。そのうちに手足にしつこい痛みが出てきたり、くり返し熱を出したり、あざがたくさんできるようになったり、リンパ節・肝臓・脾臓が大きく腫れて、外から触ることができるようになってきます。これらの症状がいくつかそろえば白血病の可能性が疑われます。白血病を診断し、治療法を決めるためには、血液検査に加えて骨髄の検査が必要です。通常、骨髄の検査は入院して行います。

いつ頃から白血病にかかっていたの?

 このことについて、答えはまだ誰にもわかりません。白血病の初期の症状は、一般的な風邪と区別できないことも多いので、専門の医師にとっても診断は難しいのです。ただし、診断がつけば速やかに治療に入ることが、病気を克服するためには重要です。たとえ診断までに時間がかかったとしても、決して治療を始めるのに遅くはありません。

小児急性リンパ性白血病では、骨髄移植を必要とすることは少ないです。

 小児の急性リンパ性白血病は、現在では約90%が治癒可能になっており、そのうち70%以上は何種類かの薬を組み合わせた化学療法(抗がん剤治療)で治癒します。これは全身に広がっている白血病細胞に対して、注射や飲み薬をからだのすみずみまで行き届かせて治療します。ただし、お薬が届きにくい体の場所が2ヶ所あります。それは、中枢神経(脳と脊髄)と、男の子の場合はこう丸(精巣)です。このため特に中枢神経に対しては、腰から髄腔内に注射を行うことで薬を十分に行き渡らせます。こう丸に対しては、治療法が進歩したことにより、再発の率に特に違いはなくなりました。残り20%弱の患者さんは、骨髄移植などの造血幹細胞移植を併用して治癒します。造血幹細胞移植は、化学療法よりも治療後の合併症が高い頻度で起こるため、化学療法で治りにくい患者さんに限られます。そのため、初期に病気の治りやすさを的確に予測して、治療法を選択します。具体的に造血幹細胞移植が行われるのは、①通常の化学療法では再発してしまうことが予測される場合(治りにくいことが分かっている特殊な染色体を持つタイプなど)、②通常の化学療法では寛解が得られない場合、③通常の化学療法を受けたが比較的早期に再発してしまった場合、などです。

化学療法の副作用にはどんなものがありますか?

 化学療法の作用は、細胞の成長・増殖を抑えて、細胞を破壊することです。このため盛んに増える白血病細胞を破壊することができるのです。しかし盛んに増える細胞であれば正常な細胞であっても同じように作用してしまうため、副作用が現れるのです。
主な副作用として、

  • 感染症を起こしやすくなる
  • 吐き気・下痢・便秘など(胃腸の症状)
  • 口内炎など粘膜の症状
  • 脱毛、爪・皮膚色の変化など外見上の変化
  • 貧血・白血球減少・血小板減少(3つをあわせて「骨髄抑制」と表現します)
  • 肝臓や腎臓の障害
  • 心臓の障害

などがあげられます。
 その他、お薬によってはアレルギー反応などの副作用もあります。同じお薬でも個人差もあり、また場合によっても副作用の出方にはばらつきがあります。ほとんどの副作用は、薬を使った後しばらくの間だけ見られるもので、自然に回復します。白血病に対する治療効果をあげるためには、ある程度の副作用が出ることは避けられないことですが、副作用に対して有効なお薬を用いることによって副作用の軽減に努めます。

治療期間はどれくらいですか?

 化学療法の治療期間は通常約2年間ですが、入院で治療を行う期間は約半年~1年間であり、残りの治療は外来通院にて行います。造血幹細胞移植が必要となる場合は、移植で治療が終了となりますが、入院期間は様々です。

白血病の治療費負担について

 診断がはっきりした後の治療費については、「小児慢性特定疾患研究事業」によって公費で支払われます。詳しいことは、各施設の医事課や各自治体の窓口にお問い合わせください。