京都府立医科大学での小児がん治療

小児がんとは?

網膜芽腫

 網膜(もうまく)は、眼球の後ろ側の内壁を覆う薄い膜状の組織で、視覚的な映像(光情報)を神経信号(電気信号)に変換する働きを持ちます。本疾患は、この網膜から発生する、小児の眼部で最も頻度の高い悪性腫瘍です。本邦における新規発症数は、年間約80人と推定されます。
 原因として、細胞分裂(細胞周期)に関わる網膜芽腫遺伝子(RB1遺伝子)の異常が同定されています。全体の40%は家族性(遺伝性)で1歳までに診断され、ほぼ全例が両側性に発症します。残りの60%は弧発性(非遺伝性)で、2-3歳で診断されることが多く、ほとんどが片側性です。
 腫瘍がある程度大きくなってくると、白色瞳孔(瞳孔から入った光が、眼球の奥にある腫瘍に反射して、瞳孔が白く見えること)、斜視、結膜の充血、視力低下、眼瞼腫脹、眼球突出などの症状が出現します。
 眼底検査(瞳孔の奥を、眼底カメラや眼底鏡という器具を用い、レンズを通して観察し、網膜を調べる検査)や、超音波・CT・MRIといった画像検査で、眼内腫瘍および眼球外進展の有無を検索します。眼球外浸潤がある場合は骨髄検査(針を腸骨という腰の骨に刺して骨髄液を採取する検査)を施行します。このように病期を診断をすることで治療方針を決定します。
 治療の目標は第1に救命、第2に視機能・眼球の温存、第3に治療による後障害を最小限にとどめることです。腫瘍が進行し、治療後に視力の回復がまったく期待できない場合や、眼球外浸潤がある場合などは、眼球摘出の適応となります。眼球温存が可能な場合、放射線照射や全身化学療法などを、眼底検査で反応を評価しながら行います。また必要に応じて、局所療法を追加します。その後は、外来で腫瘍の定期的な評価のために血液検査やMRIを行い、さらに患児の正常な発達や成長を評価・助言するために小児科的な診察を行っております。
 本疾患の生命予後は90%以上と全体としては良好ですが、眼球外進展例では依然として不良です。眼球予後は、両側性/片側性、進行性/非進行例で異なり、眼球摘出率としては、両側性非進行側:2%、両側性進行側:64%、片側性:75%となっています。視力予後は腫瘍の大きさや網膜剥離の有無など多くの要因の影響を受けるため、治療前に推定することは困難ですが、黄斑(網膜にある、視覚の最も鋭敏な部分)に腫瘍が無い場合、保存眼球の90%以上で0.5以上、全例で0.01以上の視力を維持できるとされています。一方、黄斑に腫瘍がある場合、視力0.5以上は24%、0.01以上は45%にとどまっています。当科では最適な治療の提供と、網膜芽細胞腫だけでなく全人的な長期のフォローを心がけております。