A.輸血

 貧血、血小板減少に対する補充療法と血液製剤、血漿タンパク製剤について簡単にまとめる。輸血に際しては特に微小凝集塊の除去、輸血後GVH(Graft Versus Host)反応等について考慮が必要である。

1)ヘマトクリット、ヘモグロビン濃度(年齢別正常値)

年齢 ヘマトクリット(%) ヘモグロビン(g/dl)
新生児(1〜3日) 44〜72 15〜23
乳児メモ1) 28〜42 9〜14
小児 35〜49 12〜15
青年期 37〜49 13〜16

メモ1) 生後3ヶ月で最も低値になる。

 

2)貧血の補正メモ2)

新生児
必要輸血量(ml)=体重(kg)×80ml/kg×(Ht期待値−Ht実測値)/投与血のHt

乳児以上
必要輸血量(ml)=(Ht期待値%−Ht実測値%)×2.2×体重(kg)

メモ2) CPD血液の時間的な変化参1)
経過日数 1 7 14 21
pH 7.1 7.8 7.0 6.9
PCO2(mmHg) 48 80 110 140
乳酸(mEq/l) 41 101 145 179
重炭酸(mEq/l) 18 15 12 11
カリウム(mEq/l) 3.9 12 17 21
グルコース(mg/dl) 345 312 181 231
ヘモグロビン(mg/dl) 1.7 7.8 13 19
2,3-DPG(μM/ml) 4.8 1.2 <1 <1
血小板(%) 10 0 0 0
第V因子&VII因子(%) 70 50 40 20

参考文献1) Miller RD,Brzica SMJr : Blood Components,Colloids and Autotransfusion Therapy. 1329-1367. Anesthesia. Edited by RD Miller. Churchill Livingstone, Melbourne, 1986.

 

3)造血を目的とする製剤

・ヒトエリスロポエチン
一般名 製品名 用法・適応
エポエチンアルファ エスポー 静注:100〜200単位/kg/日、週2〜3日
・赤血球前駆細胞に直接作用し、造血効果発揮。
鉄欠乏時は鉄剤併用。
エポエチンベータ エポジン

 

・鉄剤
一般名 製品名 用法・適応
ピロリン酸第二鉄 インクレミンシロップ 経口:1歳> 12〜24mg
1〜5歳  18〜60mg
6〜15歳  60〜90mg
静注:1〜2mg/kg/日、緩徐静注
含糖酸化鉄 フェジン

 

4)血小板の補充

適応1.2万/μl以下の血小板減少症
2.血小板機能低下による出血

血小板数1万/μl増加させるためには単位体表面積(m2)あたり2単位の血小板輸血が必要。メモ3)

予想増加値(/μl)= [輸血血小板総数/循環血液量(ml)] × 2/3 ×10-3

(2/3:脾プールにおける補足を示す補正値)

メモ3) 患者の状態、すなわち出血症状、感染症、発熱、肝脾腫、DICなどの要因によりかなり誤差があり、計算値の2〜3倍の血小板輸血が必要なときもある。なお正常血小板を正常人に輸注したときの半減期は3〜4日。平均寿命は8〜10日ぐらい。

5)血液製剤参2)メモ4)8)

血液製剤名適応、効果量(ml)貯法℃有効期限
赤血球赤血球M.A.P
(RC-MAP)
血中赤血球不足またはその機能廃絶の場合130
260
4〜6採血後21日間
洗浄赤血球
(WRC)
血漿成分による副作用200
400
調整後24時間
白血球除去
赤血球LPRC
抗白血球抗体による副作用
血小板濃厚血小板(PC)血小板減少症20〜25020〜24
振とう
採血後72時間
濃厚血小板HLA
(PC-HLA)
抗HLA抗体による不応状態
血漿新鮮液状血漿
(FP)
血液凝固因子の補給80
160
450
4〜6調整後12時間
新鮮凍結血漿
(FFP)
凝固因子製剤の入手困難、診断
未確定多種凝固因子の欠乏
〜20
以下
採血後1年間
全血人全血液CPD
(WB-F)
新鮮な血液細胞/血漿成分の補給228
456
4〜6採血後72時間
保存血液CPD
(WB)
一般の輸血適応症採血後21日間
合成血合成血
(BET)
ABO不適合による新生児溶血性疾患200
400
4〜6調整後24時間

メモ4) 輸血パック作成
採血パック200ml用CPD液28ml(1パック総量228ml)含有。
採血後3日間は新鮮血、以後保存血。
クエン酸ナトリウム
(チトラール、チトラミン)
血液100mlあたり4〜7ml加える。

メモ5) 新鮮液状血漿の供給は中止となっている。

メモ6) 輸血後GVHD(Graft versus Host Disease:移植片対宿主病)

GVHDは移植片(graft)内のリンパ球が、宿主(host)内に生着して臓器、組織を攻撃して起きる。
急性型(100日以内に発症し、発熱、紅斑、下痢、肝障害を示す)と慢性型(100日以上たって発症し、膠原病や自己免疫疾患に類似)がある。
発症の条件 1) hostとgraftの組織適合抗原性の存在
2) graft 中にリンパ球が最低数 (1×107 細胞/kg) 以上あること
  リンパ球含有数: 全血 1×10 9
           赤血球製剤 0.25×109
           血小板製剤 4〜30×107
           顆粒球製剤 5〜10×109
   (いずれも1単位あたり) 
したがってすべて1単位でGVHDが起こりうるリンパ球を含んでいる。
3)hostが免疫不全状態にあること。
予  防  無輸血手術、自家血輸血をめざし、新鮮血、生血輸血は避ける。
輸血血液を1500〜5000 rad 放射線処理して、リンパ球機能を抑える。
採血後、輸血までの期間が短いほどGVHDの危険は高い。
(1週間以上経過した保存血がむしろ安全)

メモ7) 輸血フィルター
1)Pall corp Sq40
(screen type)ポール
φ40μ、充填量15m、WBC除去50〜60%、PBC loss 6%、5.000ml輸血可、
血小板はほぼ全部通過し、血小板機能にも影響なし、大量手術時の緊急輸血や、血小板輸血に適する
2)Sepacell R-200
(depth type)
白血球除去フィルター、内腔径10〜40μと内腔径1.8μのフィルター
WBC除去99.9%、RBC loss 8%、
血小板除去98%、プライミングボリューム 20ml 
白血球除去目的の濃厚赤血球輸液に適する。
3)インターフェース
(depth type)メディキット
最小径20μ、主にmicroaggregate(微笑凝集塊)の除去目的
フィルター充填能75ml、残血量15ml、2000〜2500mlの輸血可。
一般的な輸血に適、パンピングしすぎると血球破壊亢進
4)テルフージョン輸血セット
(screen type)テルモ
φ170〜180μ、WBC、RBC、Pltなどすべて通過

メモ8) M.A.P.中のマニトール濃度
MAP1単位中には0.44gのマニトールを含んでいる。

参考文献 2) 京都府立医科大学輸血マニュアルより

 

6)血漿タンパク製剤

(A)加熱人血漿タンパク

 プラズマネートカッター
 プラズマプロテインフラクション(PPF) 5% 250ml

 アルブミンを主体とする人血漿タンパクを5%と0.67%食塩水に相当するNaを含んでいる。

[組成]
PPFアルブミン含量44 mg/ml
Na+150 mEq/l
K+0.35 mEq/l
Cl-100 mEq/l

(2)人血清アルブミン

 アルブミン 5% 100ml,20% 20ml・50ml,25% 20ml・50ml

 人血漿を低温エタノール分画にて分離精製して得られた人血清アルブミンを凍結真空乾燥後再溶解させたもので、タンパクアルブミンとしてそのまま代謝される。25%アルブミンは血漿の約5倍の膠質浸透圧を持つ。

[組成]
25% アルブミンアルブミン含量 250 mg/ml
Na+ 135±25 mEq/l

 


 

前項目
感染症の管理 C.抗菌療法各論−7.集中治療領域で問題となる感染症

血液凝固の管理・目次

次項目
B.出血・凝固−1.出血のコントロール