A.消化管

1.下痢・腸管麻痺・嘔吐

 下痢・腸管麻痺・嘔吐は電解質バランス、水分バランスに大きな影響を与えるので早急に処置する必要がある。

1)下痢

止瀉薬メモ1)

一般名製品名用法
収れん薬
天然ケイ酸アルミニウムアドソルビン75〜150mg/kg/日 分3〜4内服
・吸着作用があり、胃および腸管内における異常有害物質、過剰水分・粘液などを吸着除去し、収れん作用、止しゃ作用を示す。
塩化ベルベリンおよびゲンノショウコエキスフェロベリンA2.5〜4.0mg/kg/日 分3内服
・ベルベリンには病原性腸内細菌に対する増殖抑制作用を認め、ゲンノショウコは没食子酸などの収れん薬を含んでいる。
次没食子酸ビスマスデルマトール25〜40mg/kg/日 分3〜6内服
・腸内異常発酵で生じた硫化水素と結合し、硫化水素ガスの刺激による腸管運動亢進を抑制する。また潰瘍面に付着して難溶性被膜を形成し収れん作用を示す。
タンニン酸アルブミンタンナルビン50〜80mg/kg/日 分4内服
・経口投与により腸内で徐々に分解されてタンニン酸を遊離し腸粘膜に収れん作用を現す。
乳酸菌製剤
ラクトミンビオフェルミン50〜80mg/kg/日 分3内服
・乳酸菌生菌製剤。糖を分解して乳酸を産生し腸内pHを低下させ病原菌の発育を抑制する。
ビフィズス菌製剤ラックビー50〜80mg/kg/日 分3内服
・腸内において多量の乳酸、揮発酸を産生し腸内pHを低下させ病原菌の発育を抑制する。
耐性乳酸菌製剤エンテロノンR50〜80mg/kg/日 分3内服
・抗菌性物質療法時の整腸。抗菌性物質投与時においても腸管内で繁殖し、腸内細菌叢の乱れを防ぐ。
その他
塩酸ロペラミドロペミン散0.02〜0.04mg/kg/日 分1〜2内服
麻薬に似た構造をもち、腸蠕動を抑制し止しゃ作用をもたらす。

メモ1)収れん薬、ロペラミドについてはその投与はできる限り短期間にとどめる。ロペラミドは強力であるが抗生剤による偽膜性大腸炎などの場合、投与は禁忌である。

 

2)腸管麻痺

(A)一般的な処置

1.減圧(胃管、大腸排ガス)
2.電解質補正
3.グリセリン浣腸(グリセリン:水=1:1にて1〜2ml/kg)
4.腹部加温
5.薬物投与(パントール、ワゴスチグミン、プロスタルモンF)等

(B)抗鼓腸剤

一般名製品名用法
パンテノールパントール、シナパン1〜10mg/kg/日 1〜3回/日筋注静注
・体内で酸化されてパントテン酸、さらにコエンザイムQとなり代謝改善に作用。術後の腸管運動麻痺に対して用いる。
フルスルチアミンアリナミンF0.1〜2mg/kg/日筋注静注
・ビタミンB1誘導体、腸管内神経叢への作用より腸蠕動運動を亢進させるとされている。
ジノプロストプロスタルモンF20〜40μg/kg 1〜2回/日点滴静注
・プロスタグランジンF。胃腸管運動亢進作用。緑内障、心疾患、喘息患者には要注意。希釈して2時間かけて投与する。
メチル硫酸ネオスチグミンワゴスチグミン0.005〜0.02mg/kg 1〜3回/日筋注、皮下注
・抗コリンエステラーゼ作用により副交感神経興奮作用をもつ。消化管運動を亢進し、アトロピンによる消化管運動抑制作用に拮抗する。

3)緩下剤

一般名製品名用法
刺激性下剤
ビコスルファートNaラキソベロン
・腸内細菌由来の酵素により加水分解、活性化されて腸蠕動亢進水分吸収阻害作用をもたらす。1日1回内服
6ヶ月以下2滴(0.13ml)
7〜12ヶ月3滴(0.20ml)
1〜3歳6滴(0.40ml)
4〜6歳7滴(0.46ml)
7〜15歳10滴(0.67ml)
成人10〜15滴(0.67〜1.0ml)
センノシドプルセニド0.2〜0.3mg/kg/日 内服
・大腸に至り、腸内殺菌の作用で薬効を発揮し蠕動運動を亢進させる。
塩類下剤
酸化マグネシウム酸化マグネシウム30〜50mg/kg/日 内服
・腸内で炭酸水素塩となって緩下作用を現す。

 

3)嘔吐

制吐剤メモ2)

一般名製品名用法
メトクロプラミドプリンペラン
0.5〜0.7mg/kg/日 分2〜3内服
0.2mg/kg 1〜2回/日筋注、静注
・胃の運動を亢進させて胃内容の排出を促進させる。
ドンペリドンナウゼリン1.0〜2.0mg/kg/日 分3内服
1.0〜2.0mg/kg/日 2回/日座薬
・上部消化管、延髄嘔吐中枢に作用して、抗ドーパミン作用により薬効を発現。
プロクロルペラジンノバミン2.5〜7.5mg/kg/日 1回/日内服
0.1mg/kg 1回/日筋注
・メジャートランキライザー
ドロペリドールドロレプタン0.05mg/kg 筋注、静注
・メジャートランキライザー

メモ2)これら制吐剤にはいずれも副作用として錐体外路症状がある。

 

2.消化管出血

 保存的な処置として、
1.冷水にて冷却(ボスミン1mg/1000ml)
2.トロンビン末投与(フィブリノーゲンをフィブリンに変えて止血作用を発現する。マーロックスもしくは牛乳で200単位/mlに溶かし1ml/kg経口投与する)
3.止血剤投与
4.抗潰瘍剤、制酸剤、H2ブロッカー投与
等がある。輸血、内視鏡的・外科的止血が必要となることもある。

(A)吐血治療剤

一般名製品名用法
水酸化アルミニウム
水酸化マグネシウム
マーロックス0.1〜0.6mg/kg/日 分4〜6内服
・水酸化アルミニウムは酸を中和し、潰瘍面に被膜を形成して、粘膜保護作用を発現。酸化マグネシウムには制酸作用、蛋白分解阻止作用、緩下作用がある。
アルギン酸ナトリウムアルロイドG(5%)0.3〜0.6ml/kg 3〜6回/日内服
・出血部を被覆し、血液凝固を促進させ止血作用を発現する。

(B)H2ブロッカー

一般名製品名用法
シメチジンタガメット2〜4mg/kg 2〜4回/日   内服、筋注、静注
ラニチジンザンタック3mg/kg 2回/日   内服、筋注、静注
ファモチジンガスター0.2〜0.4mg/kg 1〜2回/日 内服、筋注、静注

(C)プロトンポンプ阻害剤

一般名製品名用法
ラベプラゾールパリエット0.2〜0.4mg/kg 1回/日 内服
ランプラゾールタケプロン0.5mg/kg   1回/日内服

(D)ムスカリンレセプター拮抗剤

一般名製品名用法
ピレンゼピンガストロゼピン1mg/kg/日   内服、静注

 

3.腸内殺菌

 顆粒球減少症などの免疫不全状態、消化器手術前処置において行う。

非吸収性抗生剤の投与
一般名製品名用法
アミノグリコシド系抗生剤
カナマイシン硫酸カナマイシン30〜50mg/kg/日 分4内服
抗真菌剤
ナイスタチン
アムホテリシンB
マイコスタチン
ファンギゾン
2.5〜5万/kg/日 分3内服
50〜100mg 2〜4回/日内服
その他の非吸収性抗生剤
バンコマイシン
ポリミキシンB
バンコマイシン
ポリミキシンB
30〜50mg/kg/日 4回/日内服
5万〜7.5万/kg/日 分3〜4内服

 


 

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