A.細菌の分類

 細菌はグラム染色法によりグラム陽性菌とグラム陰性菌に大別される。これらは細菌分類の大きな指標であり、さらに臨床的には抗菌剤感受性と重要な関連性を持っている。

1)グラム陽性菌

好気性球菌ブドウ球菌Staphylococcusメモ1)黄色ブドウ球菌S.aureus
表皮ブドウ球菌S.epidermidis
腐性ブドウ球菌S.saprophyticus
レンサ球菌Streptococcusメモ2)化膿レンサ球菌S.pyogenes
B群レンサ球菌S.agalactiae
緑色レンサ球菌S.viridans
肺炎球菌S.pneumoniaeメモ3)
腸球菌Enterococcusメモ4)大腸レンサ球菌E.faecalis
ヘシュウム菌E.faecium
アビュウム菌E.avium
桿菌コリネバクテリウムCorynebacteriumジフテリア菌C.diphtheriae
コリネバクテリウムC.sp
バシラスBacillus枯草菌B.subitilis
炭疽菌B.anthracis
セレウス菌B.cereus
リステリアListeriaL.monocytogenes
嫌気性球菌ペプトコッカスPeptococcus
ペプトストレプトコッカスPeptostreptococcus
桿菌クロストリジウムClostridiumボツリヌス菌C.botulinum
ウェルシュ菌C.perfringens
破傷風菌C.tetani
C.difficile
ユーバクテリウムEubacterium
プロピオニバクテリウムPropionibacterium
乳酸桿菌Lactobacillus

メモ1)ブドウ球菌:ウサギやヒトの血液を凝血させるコアグラーゼの産生能で病原性が異なる。

コアクラーゼ陽性菌S.aureus

病原性は強い。今日多くはペニシリナーゼ型β-ラクタマーゼを産生しペニシリン耐性である。

コアクラーゼ陰性菌(CNS)S.epidermidis,S.saprophyticus
皮膚などの常在菌で病原性は弱いが、新生児感染、血管内異物感染、compromised hostなどの日和見感染等が問題。

・MRSA(メチシリン・セフェム耐性黄色ブドウ球菌)
 新型多剤耐性黄色ブドウ球菌で、ペニシリンや多くのセフェム系薬剤、さらにアミノグリコシド、テトラサイクリン、マクロライド等に対して高度耐性である。β-ラクタム系抗生剤に対する広い耐性の機構としてはβ-ラクタム剤の標的部位(PBP)の変化による親和性の低下が知られている。

メモ2)レンサ球菌

・溶血環による分類
α型溶血緑色連鎖球菌:口腔内常在菌、亜急性心内膜炎の起炎菌
β型溶血溶血性連鎖球菌:病原性は強い
γ型溶血非溶血性連鎖球菌:起炎菌となることはほとんどない

・細胞壁抗原性による分類(A-O群)
A群化膿性連鎖球菌
B群GBS:口腔、腟内常在菌。新生児、未熟児の敗血症、髄膜炎の起炎菌
D群腸球菌:腸常在菌。多くの抗生剤に耐性

メモ3)肺炎球菌:レンサ球菌の1菌種。ペニシリンが第一選択であるが近年耐性菌も出現。
メモ4)VRE(vancomycin resistant enterococci):バンコマイシン耐性の腸球菌で、セフェム系薬剤の乱用により出現。日和見感染をきたし、確実な抗菌治療法はないとされる。

 

2)グラム陰性菌

好気性球菌ナイセリアNeisseria淋菌N.gonorrhoeae
髄膜炎菌N.meningitidis
ブランハメラBranhamellaカタル球菌B.catarrhalisメモ4)
桿菌ヘモフィルスHaemophilusインフルエンザ菌H.influenzaeメモ5)
パラインフルエンザ菌H.parainfluenzae
軟性下疳菌H.ducreyi
ボルデテラBordetella百日咳菌B.pertussis
パラ百日咳菌B.parapertussis
気管支敗血症菌B.bronchiseptica
大腸菌Escherichiaメモ7)大腸菌E.coli
シトロバクターCitrobacterC.freundii
サルモネラSalmonellaチフス菌S.typhi
パラチフスA菌S.paratyphi-A
パラチフスB菌S.schottmuelleri
ネズミチフス菌S.typhimurium
腸炎菌S.enteritidis
赤痢菌Shigella志賀赤痢菌S.dysenteriae
フレクスナー赤痢菌S.frexneri
ソンネ赤痢菌S.sonnei
クレブシエラ菌Klebsiellaメモ8)肺炎桿菌K.pneumoniae
K.oxytoca
エンテロバクターEnterobacterE.cloacae,E.aerogenes
セラチアSerratiaメモ9)S.marcescens
ハフニアHafniaH.alvei
プロテウスProteusメモ10)P.mirabilis
P.vulgaris
モルガネラMorganellaM.morganii
プロビデンシアProvidenciaP.rettgeri,P.alcalifaciens
P.stuartii
エルシニアYersiniaペスト菌Y.pestis
Y.enterocolitica
キャンピロバクターCampylobacterC.coli,C.jejuni,C.fetus
ビブリオVibrioコレラ菌V.cholera
腸炎ビブリオV.parahaemolyticus
エロモナスAeromonasA.hydrophilia
シュードモナスPseudomonas緑膿菌P.aeruginosaブドウ糖非発酵菌メモ11)
セパシア菌P.cepacia
プチダ菌P.putida
キサントモナスXanthomonasマルトフィリア菌X.maltophilia
アシネトバクターAcinetobacterA.calcoaceticus
フラボバクテリウムFlavobacteriumF.memingosepticum
ブルセラBrucella
レジオネラLegionellaL.pneumophilia
嫌気性メモ11)球菌ベイロネラVeillonella
桿菌バクテロイデスBacteroidesB.fragilis
B.melaninogenicus
フゾバクテリウムFusobacterium

メモ5) 近年呼吸病原菌として注目されているβ-lactamase産生菌の増加がみられる。
メモ6) インフルエンザ菌:上気道炎、中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎等の起炎菌。アンピシリン、ピペラシリン等が有効。
メモ7) 大腸菌:腸管内常在菌。尿路や腹腔内感染症の代表起炎菌。近年アンピシリンやセフェムの耐性菌が多くなる。
メモ8) クレブシエラ:腸管や気道の常在菌。肺炎、尿路、腸管、胆道等の感染症起炎菌となる。多くのペニシリン系抗生剤は無効。第二、第三世代のセフェム系が抗菌力を示す。
メモ9) セラチア:敗血症、髄膜炎、心内膜炎等の起炎菌。多くのペニシリン、セフェムに耐性。
メモ10) プロテウス(モルガネラ、プロビデンシア):尿路感染症、中耳炎、肺炎等の起炎菌。トリプトファンを分解してインドールを産生するかどうかにより分類され、両者の間で抗生剤感受性が異なる。
インドール陰性菌P.mirabilis
アンピシリン、ピペラシン、第三世代セフェム系、アミノグリコシド
インドール陽性菌P.vulgaris,M.morganii
P.rettgeri,P.alcalifaciens,P.stuartii
第三世代セフェム系、アミノグリコシド

メモ11) ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌(GNF-GNR):シュードモナス、キサントモナス、アシネトバクター、フラボバクテリム等
グラム陰性桿菌は嫌気状態でブドウ糖を分解してエネルギーを得る発酵菌と、分解しない非発酵菌に分かれる。非発酵菌は菌交代症、二次感染で問題となることが多い。種々の抗生剤、さらに常用消毒剤に対して抵抗性を認める。

メモ12)嫌気性菌(偏性嫌気性菌):クロストリジウム、ペプトコッカス、ペプトストレプトコッカス、バクテロイデス、フゾバクテリウム等。
アミノグリコシドはすべて無効。B.fragilis以外はβ-ラクタム剤有効。
B.fragilisに対しては、セフメタゾール、ラタモキセフ、フルモキセフ等が有効。
好気性菌偏性好気性菌酸素は必要緑膿菌
微好気性菌酸素少量で増殖がよい淋菌
通性嫌気性菌酸素がなくても増殖大腸菌
嫌気性菌偏性嫌気性菌酸素は有害バクテロイデス

 

3)その他、細菌等

(A)抗酸菌

結核菌Mycobacterium tuberculosis
らい菌Mycobacterium leprae
非定型抗酸菌Atypocal mycobacterium

(B)放線菌類

放線菌Actinomyces
ノカルジアNocardia

(C)スピロヘータ類

梅毒トレポネーマTreponema pallidum
レプトスピラLeptspira黄疸出血性レプトスピラ症(ワイル病)
秋季レプトスピラ症

(D)マイコプラズマMycoplasma

M.pneumoniae
Ureaplama urealytium

(E)リケッチアRickettsia

発疹チフスリケッチアR.prowazekil
発疹熱リケッチアR.mooseri
つつが虫病リケッチアR.tsutsugamushi

(F)クラミジアChlamydia

オウム病C.psittaci
トラコーマC.trachomatis

 

4)真菌

アスペルギルスAspergillus fumigatus
ワリプトコッカスCryptococcus neoformans
カンジダCandida albicans
ムコールMucor
スポロトリクムSporothrix schencki
皮膚糸状菌Dermatophytes

 


 

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