B.感染症の診断

1.感染症の診断

感染症の診断には以下の3項目が必要である。

・炎症所見
・臓器症状
・起炎菌の同定メモ13)

メモ13) 起炎菌の同定に際しては、分離された検体が本来無菌的か否かを考慮する必要がある。
無菌的:血液、髄液、胸腹水等  無菌的でない:喀痰、尿、皮膚等

 

2.急性炎症の診断

 急性炎症の診断には白血球数、分画と急性相反応蛋白が用いられる。白血球については年齢別に正常値が異なるため、その差異を知っておく必要がある。

1)白血球数(年齢別正常値)

年齢 白血球数(1000個/ul)
1日メモ14) 18.0(9.4〜34.0)
1ヶ月 12.0(5.0〜19.5)
1〜3歳 10.0(6.0〜17.5)
学童期 8.0(5.5〜15.5)
成人 7.5(4.5〜11.0)

2)白血球分画(%)メモ15)

好中球(帯状、band) 3〜5
好中球(節状、seg) 54〜62
リンパ球 25〜33
単球 3〜7
好酸球 1〜3
好塩基球 0〜0.75

3)急性相反応物質

(A)CRP(C反応性蛋白)

測定値(mg/dl)  
0.1以下メモ16) 炎症なし
0.1〜1.0 重症細菌感染症なし
1.0〜9.9 炎症、組織破壊あり
10以上 重症細菌感染症の可能性

(B)シアル酸

測定値(mg/dl)  
38以下 炎症なし
38〜68 重症炎症なし
68以上 炎症疾患の可能性

 

メモ14) 生直後の白血球数の高値は好中球数の高値による。
メモ15) 乳児期にはリンパ球比率が高く60%程度に達する。
メモ16) 新生児では0.1以下でも感染症を否定できない。再検による増加があれば感染症を疑う。

 

3.免疫グロブリン

 免疫グロブリンにはIgA、IgD、IgE、IgG、IgMがあるが、感染症と関連の深いIgGおよびIgMについて年齢別の正常値を示した。

IgG、IgM(年齢別正常値)メモ17)18)

年齢 IgG(mg/dl) IgM(mg/dl)
新生児 700〜1,500 5〜30
6ヶ月まで 300〜1,000 15〜110
2歳まで 500〜1,200 40〜240
幼児 500〜1,300 50〜200
学童期 700〜1,650 50〜260
成人 600〜1,600 40〜350

 

メモ17)IgGは胎盤通過性があり、新生児では母体からの受動免疫を保持しているが、産生能力は不十分である。受動免疫が低下し、産生能がいまだ低い6ヶ月頃に最も低値となる。
メモ18)IgGは受動免疫でないため出生直後の高値は先天性感染を意味し、診断に用いられる。

 

4.SIRS(全身性炎症反応症候群)

 感染症患者の予後を決定するのは敗血症およびそれに関連して生じる敗血症性多臓器不全の存在であり、SIRSは敗血症およびその周辺病態へのentry criteriaである。

<SIRS診断基準と敗血症の各種病態の定義>メモ19)20)

(A)SIRSの診断基準

 侵襲に対する全身性炎症反応で、以下の2項目以上が該当するとき

(1) 体温>38℃または<36℃
(2) 心拍数>90/min
(3) 呼吸数>20/minまたはPaCO2:<32Torr
(4) 白血球数>12,000/mm3または<4,000/mm3あるいは未熟顆粒球>10%

(B)敗血症(sepsis)の定義

 感染によるSIRS(注:血中の細菌同定は必須でない)

(C)重症敗血症(severe sepsis)の定義

 臓器機能障害(参照)・循環不全(乳酸アシドーシス、乏尿、急性意識障害など)あるいは血圧低下(収縮期血圧<90mmHgまたは平時の収縮期血圧より40mmHg以上の血圧低下)を合併する。

(D)敗血症性ショック(septic shock)の定義

 適切な補液でも血圧低下(収縮期血圧<90mmHgまたは平時の収縮期血圧より40mmHg以上の血圧低下)が持続する。
 血管作動薬使用により血圧が維持されている場合でも、臓器機能障害・循環不全(乳酸アシドーシス、乏尿、急性意識障害など)がある。
(ACCP/SCCM Consensus Conference Committee.Chest 101 : 1644,1922)

 

メモ19) この定義は小児を除外しており、心拍数、呼吸数のそれぞれの項目は正常小児ではすべて陽性値となり、これだけでSIRSと診断されてしまうため、小児にそのまま適用することは困難である。
小児では以下のような年齢別基準値を用いる。

年齢 心拍数(回/min) 呼吸数(回/min) 収縮期血圧(mmHg)
0〜1月 >180 >50 <50
1〜12月 >170 >40 <70
1〜5歳 >150 >30 <80
5〜10歳 >130 >25 <80
>10歳 >120 >20 <90

メモ20) 重症化しやすいSIRS
 一般に成人では、重症化し多臓器不全に進行する可能性の高いSIRSは以下のような場合であるとされている。

1)SIRS状態が4日以上連続する
2)SIRS診断項目(4種)がすべて陽性である
3)血中humoral mediatorあるいはcytokinesが高値で推移・持続する場合
4)組織酵素代謝が障害される場合
 (a)gastric pHが7.3以下のとき
 (b)心拍出量・動脈血酵素含量の低下を伴うの低下を認めるとき

 

5.エンドトキシン血症

 グラム陰性菌の菌体成分であるエンドトキシンは、グラム陰性菌敗血症等で血中に増加し、さまざまな臨床症状を引き起こすと考えられている。

トキシカラー法メモ21)22) 7pg/ml 以上 陽性
エンドスペシー法 3pg/ml 以上 陽性

メモ21) エンドトキシン血症存在は敗血症の主要原因の一つであるが、血中測定値は必ずしも臨床所見と合致しないことも多い。
メモ22) 真菌多糖の(1→3)−β−Dグルカンの存在により疑陽性を示すことがある。

 

6.真菌症の診断

 補助診断法として以下の検査法が用いられる。

製品名 β−Dグルカンテスト カンジテック ラボフィット
検出菌 真菌全般 カンジダ属 カンジダ属
対象物質 (1→3)−β−Dグルカン 糖蛋白質抗原 D−アラビニトール
判定方法 11pg/ml以上 ×2以上で陽性 男:1.5μM/mg
女:1.3μM/mg

 検出可能菌種

C.albicans
その他のCandida
Aspergillus fumigatus × ×
その他のAspergillus × ×
Penicillium × ×
Cyptococcus neoformans × × ×
Trichosporon × ×
Pneumocystis carinii × ×
接合菌(Mucor × × ×

 


 

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