C.抗菌療法各論 1.抗生剤

2)細胞壁合成阻害剤

(A)β−ラクタム系抗生剤メモ27)

ペニシリン系注射剤メモ28)

一般名略号製品名用法(mg/kg/日)
I.第一世代ペニシリン
ベンジルペニシリンPCG結晶ペニシリンGカリウム2.5〜30万単位/kg
II.ペニシリン耐性ブドウ球菌用
クロキサシリンMCIPCメトシリンS、オルベニン
(ビクシリンS:ABPC合剤)
50〜100
100
III.グラム陰性菌への抗菌スペクトル拡大
アンピシリンABPCビクシリン、ペントレックス25〜50、最大300
アスポキシシリンASPCドイル40〜80、最大160
IV.緑膿菌を含むグラム陰性桿菌への抗菌スペクトル拡大
カルベニシリンCBPCパイオペン、グリペニン、ゼオペン100〜150、最大400
スルベニシリンSBPCリラシリン40〜80、最大400
チカルシリンTIPCチカルペニン、モナペン80〜120、最大400
ピペラシリンPIPCペントシリン50〜125、最大200

メモ27) β−ラクタム系抗生剤の抗菌活性にはβーラクタム環が必要であり、細菌のもつβ−ラクタマーゼはこの環を加水分解で開裂させる。したがってβーラクタマーゼ産生菌はβ−ラクタム系薬剤に耐性である。β−ラクタマーゼはペニシリン系薬剤とセフェム系薬剤のどちらをよりよく分解するかでペニシリナーゼとセファロポリナーゼに分けられる。
メモ28) 耐性ブドウ球菌用ペニシリンを除いて他のペニシリン系はペニシリナーゼ型β−ラクタマーゼには不安定で不活化されやすい。また近年耐性ブドウ球菌ペニシリンが無効の多剤耐性ブドウ球菌(MRSA)が増加してきている。

 

ペニシリン系経口剤
一般名略号製品名用法(mg/kg/日)
I.酸耐性ペニシリン
ベンジルペニシリンPCGバイシリンG散剤:2.5〜5万単位/kg
フェノキシメチル
ペニシリン
PCVブイカルK、ぺニシリンV散剤:2.5〜5万単位/kg
II.耐性ブドウ球菌用ペニシリン
クロキサシリンMCIPCメトシリンS、オルベニンDS:25〜50
III.グラム陰性菌への抗菌力拡大
アンピシリンABPCヘルペン坐剤坐剤:25〜50
バカンピシリンBAPCバカシル、ペングローブDS:15〜40
アモキシシリンAMPCクラモキシル、サワシリン、パセトシン細粒:20〜40
シラクシリンACPCバストシリン、ワイビタール細粒:25〜50
スタミシリンSBTPCユナシン細粒:15〜30
ピブメシリナムメモ29)PMPCメリシン、ミズテック

3〜5

補.複合ペニシリン製剤
アンピシリン/
クロキサシリン
ABPC/
MCIPC
ビクシリンS,ソルシリンC細粒:20〜40
アンピシリン/
ジクロキサシリン
ABPC/
MDIPC
コンビペニックス細粒:20〜50

メモ29)
生体内で代謝されてメシリナムとなり抗菌作用を発揮するprodrugである。ただし、現時点では錠剤(50mg)のみ。

セファロスポリン系注射剤メモ18)
一般名略号製品名用法(mg/kg/日)
I.グラム陽性菌への抗菌力。第一世代セフェム
セファロチンCETケフリン20〜80
セファロリジンCERケフロジン10〜100
セファゾリンCEZセファメジン20〜50、最大100
セファピリンCEPRセファトレキシール20〜80
セフテゾールCTZタイファロゾール20〜80
II.グラム陰性菌に対する抗菌力拡大。第二世代セフェム
セファマンドールCMDケフドール50〜100、最大200
セフォチアムCTMパンスポリン、ハロスポア40〜80、最大160
セフロキシムCXMジナセフ30〜100、最大150
III.グラム陰性菌に対する抗菌力のさらなる拡大。第三世代セフェムメモ19)
セフォタキシムCTXクラフォラン50〜100、最大150
セフチゾキシムCZXエポセリン40〜80、最大120
セフメノキシムCMXベストコール40〜80、最大160
セフォジジムCDZMノイセフ、ケニセフ60〜80、最大120
セフトリアキソンCTRXロセフィン20〜60、最大120
セフタジディームCAZモダシン40〜100、最大150
セフォペラゾンCPZセフォペラジン、セフォビット25〜100、最大150
セフピミゾールCPIZアジセフ、レニラン40〜80
セフピラミドCPMセパトレン、サンセファール30〜80、最大150

セフピロム

CPR

ケイテン、プロアクト

60〜80、最大200
セフェビムCFPMマキシピーム20〜40、最大80

セフォゾプラン

CZOP

ファーストシン

20〜40、最大80
セフォセリスCFSLウインセフ20〜40、最大80
緑膿菌のみ抗菌作用
セフスロジンCFSタケスリン、チルマポア60〜100、最大200

メモ30) 第一世代および第二世代セファロスポリン剤はペニシリナーゼ型βーラクタマーゼには安定であるが、セファロスポリン型βーラクタマーゼには不活化されやすい。第三世代以後はβーラクタマーゼに安定である。

メモ31) 新しい第三世代セフェムの特徴
セフトリアキソン:血中半減期(β相)が7.5時間とセフェム系抗生剤のなかで最も長い。
セフタジディーム:緑膿菌、その他ブドウ糖非発酵グラム陰性菌およびセラチアに対する抗菌力は現在のセフェム系のなかでは最も強い。
セフォペラゾン:尿中排泄率は低く、主に胆汁に高濃度に排泄される。
セフピミゾール:血清補体、好中球等の非特異的感染防御因子との間に作用を持つ。
セフピラミド:血中半減期(β相)は4〜5時間でセフトリアキソンについで長い。主に胆汁中に排泄される。
セフピロム:抗菌スペクトルが拡大し、ブドウ球菌に対しても抗菌力をもつ。

 

セファロスポリン系経口剤他
一般名略号製品名用法(mg/kg/日)
I.第一世代セフェム
セファレキシンCEXケフレックス、ラリキシンDS:30〜60
セフラジンCEDセフロDS:25〜50
セファトリジンCFTブリセフ、セプチコールDS:30〜50
セファクロールCCLケフラール、セファクロルDS:30〜60
セフロキサジンCXDオラスポアDS:30〜60
セファドロキシルCDXセドラール、サマセフDS:30〜60
II.第三世代セフェム
セフチゾキシムCZXエポセリン坐薬坐剤:40〜80
セフィキシムCFIXセフスパン細粒:3〜6(12)
セフジニルCFDNセフゾン細粒:9〜18
セフテラムピボキシルCFTM-PIトミロン細粒:9〜18
セフジトレンピボキシルCDTR-PIメイアクト細粒:9
セフポドキスムプロキセチルCDPX-PRバナンDS:6〜9
III.ペネム
ファロペネムFRMファロム錠:4〜6

セファマイシン系注射剤メモ32)
一般名略号製品名用法(mg/kg/日)
I.βーラクタマーゼへの安定性。グラム陰性への抗菌力(第二世代セフェム)
セフォキシチンCFXマーキシン50〜100
セフメタゾールCMZセフメタゾン25〜100、最大150
II.グラム陰性菌に対する抗菌スペクトルの拡大(第三世代セフェム)
セフォテタンCTTヤマテタン40〜60、最大100
セフブペラゾンCBPZケイペラゾン、トミポラン40〜80、最大120
セフミノクスCMNXメイセリン20

メモ32) セファマイシン系は基本骨格にメトキシ基を持つことによりβーラクタマーゼに対して極めて安定である。

 

オキサセフェム系注射剤メモ33)
一般名略号製品名用法(mg/kg/日)
ラタモキセフLMOXシオマリン40〜80、最大150
フルモキセフFMOXフルマリン60〜80、最大150

モノバクタム系注射剤メモ34)
一般名略号製品名用法(mg/kg/日)
アズスレオナムAZTアザクタム40〜80、最大150
カルモナムCRMNアマスリン40〜80

カルバペネム系注射剤メモ35)
一般名略号製品名用法(mg/kg/日)
イミペネムIPMチエナム(シラスタチンCS合剤)30〜80、最大100
パンペネムPAPMカルベニン(ベタミプロンBP合剤)30〜60、最大100

β-ラクタマーゼ阻害剤メモ36)
一般名略号製品名用法(mg/kg/日)
スルバクタムSBTスルペラゾン(セフォペラゾンCPZ合剤)静注:40〜80、最大160
クラブラン酸CVAオーグメンチン(アモキシシリンAMPC合剤)細粒:15〜30
クラブラン酸CVAオーグペニン(チカルシリンTIPC合剤)静注:50〜100

 

メモ33) オキサセフェム系は他のセフェム系抗生剤とは異なり基本骨格の硫黄(S)原子が酸素(O)原子で置換されたもの。ラタモキセフはグラム陰性菌全般に抗菌力をもつ。フルモキセフは抗菌スペクトラムがグラム陽性菌に広がり、ブドウ球菌に対しても抗菌力をもつ。
メモ34) モノバクタム系はペニシリン系やセフェム系と異なり基本骨格はβーラクタム環単環で構成される。βーラクタマーゼに対しては極めて安定である。好気性のグラム陰性菌に対して抗菌力を持つ。グラム陽性菌に対しては抗菌力はない。
メモ35) カルバペネム系は基本骨格はペニシリンと類似する。グラム陽性、陰性菌にわたる広範囲の菌種に対して抗菌力をもつ。イミペネムは腎尿細管基底膜のdehydropeptidase-Iによって分解されやすく、この酵素の特異的阻害剤であるシラスタチンとの合剤として用いられる。
メモ36) 細菌の産生する各種βーラクタマーゼと不可逆的に結合して、その活性を永久的に阻害する作用を持つ。抗菌作用は極めて弱く、単独では使用されないが、βーラクタマーゼに不活化される各種抗生剤と組み合わせて抗菌力を増加させることができる。スルバクタムの他に、クラブラン酸(クラブラン酸・アモキシシリン:オーグメンチン)、スルタミシリン(スルタミシリン・アンピシリン:ユナシン)等がある。

(B)ホスホマイシンメモ37)

一般名略号製品名用法(mg/kg/日)
ホスホマイシンFOMホスミシン静注:100〜200 DS:40〜120

(C)グリコペプチド系抗生剤メモ38)

一般名略号製品名用法(mg/kg/日)
バンコマイシンVCM塩酸バンコマイシン経口:40 mg/kgを分4
静注:新生児1回10〜15mg/kg
生後1Wまで12hrおき
生後1Mまで8hrおき
以後40 mg/kgまで
60分以上かけ2〜4回に分けて
タゴシットTEICテイコプラニン静注:不明
(参考)8〜16mg/kg/日分2
以後4mg/kg/日30以上かけて1〜2回で

 

メモ37) 細菌の細胞壁合成阻害剤であるが、最終段階を阻害するβーラクタム剤とは異なり、初期段階のみを阻害する。グラム陽性・陰性菌に広い抗菌スペクトラムを持つ。ほとんど代謝されずに腎より排泄される。併用することにより併用薬剤のMICを減じることができる(1hr前投与)。
メモ38) バンコマイシンは経口投与で消化管から吸収されない特徴より主に腸内細菌に使用される。バンコマイシンは高分子炭水化物であり、βーラクタム剤やホスホマイシンとは異なる機序で細菌の細胞壁合成を阻害する。視神経障害、腎障害が副作用としてある。

[その他腸内殺菌の方法]
一般名略号製品名用法(mg/kg/日)
カナマイシンKM硫酸カナマイシン30〜50mg/kg 分4内服
ポリミキシンBPOB硫酸ポリミキシンB5万〜7.5万/kg 分3内服

ポリミキシンB:ポリペプチド系抗生物質。作用機序は細胞膜の障害にあるといわれる。

 

 


 

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