B.電解質管理

ICU管理のうえで知っておくべき主要電解質の知識について以下に整理する。通常、量と濃度はmEq、mEq/lで表現することが多いのでこの表記にしたがう。また体液の異常喪失時には電解質バランスが大きく崩れるためしばしばその補正が必要となる。

1)電解質の基本

(A)電解質の化学

原子量1 mEq1 g血漿濃度
ナトリウム Na+2323 mg43.5 mEq135〜150 mEq/l
カリウム K+3939.1 mg25.6 mEq3.5〜5.0 mEq/l
クロール Cl-35.535.5 mg28 mEq97〜105 mEq/l
カルシウム Ca++メモ5)4020 mg50 mEq9.5〜10.5 mEq/l
マグネシウム Mg++2412 mg83.3 mEq1〜2 mEq/l
重炭酸 HCO3-6161 mg16.4 mEq23〜25 mEq/l
1 g 食塩 NaCl58.558.5 mg18 mEq 

メモ5)イオン化カルシウム(iCa)の場合は、4.5〜4.9mEq/L(1.1〜1.2mmol/L)

(B)必要電解質量

mEq/kg/日mEq/kg/日
Na+3〜4Ca1〜2
K+2〜4Mg0.2〜0.5
Cl-3〜5P2〜3

(C)体液中電解質濃度

電解質濃度(mEq/l)
Na+K+Cl-
血漿135〜1503.5〜5.097〜105
胃液10〜1151〜358〜150
腸液100〜1405〜1590〜130
下痢便10〜9010〜8010〜110
10〜1001〜1510〜100
火傷1405110

 

2)電解質補液剤の組成

電解質補液製剤は開始液(1/2生理食塩水を基本)、維持液、細胞外液補充液に大別される。以下に主な市販製剤の組成をあげる。

(1)電解質輸液製剤(mEq/l)

NaKCaMgClリン酸乳酸酢酸マルトースブドウ糖浸透圧比
開始液ソリタT19070202.6%1
KN1A7777 2.5%1
維持液ソリタT284206618203.2%1
ソリタT3352035204.3%1
ソリタT43020104.3%1
KN3A601050202.7%1
KN3B502050202.7%1
フィジオ3号35203382010.0%2
アクチット451753710205.0%1
細胞外液
補充液
ポタコールR13043109285.0%1.5
ラクテック13043109281
ヴィーンF13043109281
ヴィーンD13043109285.0%2
ポタコールR1541541

(2)経口電解質補充製剤(ORS : oral rehydration solution) (mEq/l)

WHO-Recommended
Formulation
ソリタT顆粒
2号
ソリタT顆粒
3号
ポカリ
スエットメモ6)
Na90603523
K2020205
Cl80503018.5
Ca1
Mg330.5
HCO330
クエン酸202010
リン酸105
乳酸1
蔗糖22 g/l23 g/l0.5〜6.2 g/l
グルコース111

メモ6) 糖は蔗糖、ブドウ糖、糖となっており、季節ごとの製品で糖の濃度や種類が異なる。ソリタT顆粒は1包3gを水100 mlに溶解した時の値を示す。

 

3)電解質異常

代表的な電解質であるナトリウム、カリウム、クロール、カルシウムの異常とその補正についてまとめる。

(A)血清ナトリウム値の補正

1.高Na血症 血清Na値 150 mEq/l 以上

5%ブドウ糖液等で2日間かけてゆっくり補正
 
自由水不足分(l)=体重(kg)×0.6×(1−150/血清)

2.低Na血症 血清Na値 130 mEq/l 以上

a. 細胞外液減少型 → ナトリウム、水分補給
NaCl投与(mEq/12時間)=体重(kg)×0.2×(140−血清Na)

b. 細胞外液正常〜増加型 → 水分制限、利尿
過剰な水分量(l)=体重(kg)×(1−血清Na/目標Na)

(B)血清クロール値の補正

ナトリウム値と平行して変化している場合はナトリウムの補給も行う。

1.高Cl血症 110 mEq/l 以上

5%ブドウ糖液等で2日間かけてゆっくり補正
自由水不足分(l)=体重(kg)×0.6×((1−100)/血清Cl))
 

2.低Cl血症 (<90 mEq/l 以上)

Na 80〜100 mEq/l、Cl 100〜120 mEq/l、K 0〜20 mEq/lの電解質液で補正

 
Cl補給(mEq/12時間)=体重(kg)×0.4×(100−血清Na)

 

(C)血清カリウム値の補正

1.高K血症 

a. 5≦血清K値<6 mEq/l
 
・カリウム投与中止
・フロセミド投与

b.血清K値 6 mEq/l 以上 - 緊急処置必要
 
GI療法(グルコース・インスリン療法)
20% ブドウ糖液:50ml+RI:2単位
2.5ml/kg/時 点滴静注
重炭酸ナトリウム(メイロン) 1〜2ml/kg
8.5%グルコン酸カルシウム(カルチコール) 0.1〜0.5ml/kg
イオン交換樹脂(ケイキサレート、カリメート)
0.5〜1 g/kg/ 1 gにつき2〜5 mlの蒸留水に懸濁し
注腸(30〜60分留置)もしくは経口
腹膜潅流(PD)、血液透析(HD)、血液濾過(CAVH,CVVH)
低Na血症があればその補正をする

2.低K血症 血清K値 3.5 mEq/l 以下

カリウム負荷
塩化カリウム 0.2 mEq/kg/時
2〜3時間後 血清カリウム値チェック
フロセマイド(ラシックス)減量 スピロノラクトン(アルダクトン A)追加
グルコン酸カリウム(4 mEq/1g) ミルク内混入

(D)血清カルシウム値の補正

1.高Ca血症 血清Ca値 11 mg/dl 以上

・Naの投与10 mEq/kg/日経口・静注
・利尿薬
フロセマイド0.2 mg/kg/日経口・静注
エタクリン酸1 mg/kg/日経口
 

2.低Ca血症 血清Ca値 7 mg/dl 以下

・乳酸Ca、グルコン酸Ca投与40 mg/kg/日経口
・活性型ビタミンD200〜1,000単位経口・筋注
・8.5%グルコン酸カルシウム0.5 ml/kg/日静注
・2%塩化カルシウム2 ml/kg/日点滴静注

(E)補正電解質液剤

一般名

濃度(%)mEq/cc1A 容量(ml)1A イオン含量(mEq)
10%塩化ナトリウム注射液10.01.712034
20%塩化ナトリウム注射液20.03.42517
2.5モルNaCl液(コンクライトNa)14.62.52050
1モル塩化カリウム液(コンクライトK)7.461.02020
2モル塩化カリウム液(KCl注射液)15.02.02040
アスパラギン酸K液(アスパラK)17.121.01010
グルコン酸Ca液(カルチコール)メモ7)8.50.38104
アスパラギン酸Ca液(アスパラCa)5.00.33206.6
2%塩化カルシウム液2.00.36207.2
0.5モルCaCl液(コンクライトCa)7.351.02020
塩化アンモニウム液(コンクライトA)26.75.020100

メモ7) カルシウム値の補正にはグルコン酸Ca液を使用し、塩化カルシウム液の使用は控える。

 


 

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