B.栄養評価

 栄養状態を正しく評価して治療効果の判定、資料方針の決定を行うことは重要なことであるが小児における栄養評価は現在のところ不明な点も多く各施設で独自の方法がとられている。本ページでは一般的な栄養アセスメントの方法について述べる。

1)各種栄養評価法

A)病歴、臨床所見 1.全身状態    るいそう、肥満、浮腫の有無
2.皮膚、粘膜   乾燥、皮膚炎、出血斑などの有無
3.神経学的所見 腱反射など
B)身体計測 1.パーセンタイル値との比較
10パーセンタイル未満および90パーセンタイル以上では十分な経過観察必要

2.健常時体重比

%健常時体重=現在の体重/健常時体重×100

栄養障害 軽度:85〜95% 中等度:75〜85% 高度:75%以下
3.体重減少率

体重減少率(%)=(健常時体重−現在の体重)/健常時体重×100

栄養障害 軽度:5% 中等度:10% 高度:10%以上

4.上腕三頭筋皮下脂肪圧(TSF)
一般に左上腕三頭筋の中間点(測定部位)の1cm上方の皮膚を脂肪とともに親指と人差指でつまみ上げ、皮下脂肪測定器で3回連続測定する。新生児で10mm、以後3ヶ月ごとに1mmずつ増加し、1歳で14mm、以後5歳まで13mm程度が標準とされる。

標準の80〜90% 軽度脂肪減少
60〜80% 中等度
60%以下 高度 

5.上腕筋位(AMC)
4.と同じ部位の上腕周囲径(AC)を巻尺を用いて計測する。
    AMC=AC-3.14×TSF
新生児で9cm、9ヶ月で12cmとなり、1歳以後3歳まで13cm、その後2〜3年で1cm増加

標準の80〜90% 軽度蛋白消耗
60〜80% 中等度
60%以下 高度 

C)血液検査 1.血清アルブミン:半減期が長く鋭敏さに欠けるがスクリーニングとしては最適。
2.rapid turnover protein(RTP):肝で合成される蛋白質で、短期の栄養状態の変化の評価に使用する。アルブミンと比し半減期が短く術後など急性期の栄養状態の評価に適する。
  半減期(日)
アルブミン 17〜23
トランスフェリン 7〜10
プレアルブミン 1.9
レチノール結合蛋白 0.4〜0.7
D)免疫検査 1.遅延型皮内反応(PPD等)
陰性にて低栄養を示唆するが無感作の児では無効。
生後6週間は検査自体に意味がないとされている。
2.末梢血総リンパ球数
1,500/mm3以下で低栄養と判定。
3.リンパ球幼若化反応
T細胞機能を判定することにより栄養状態を判定。
E)クレアチニン身長指標(creatinine height index, CHI) 全身の筋肉量と相関するといわれる。
CHI=被験者の24時間尿中クレアチニン排泄量(mg)/同身長正常児の24時間尿中クレアチニン排泄量(mg)×100(%)
F)窒素バランス 蛋白質の栄養評価の一般的指標(計算法については次項2))
G)尿中3-メチルヒスチジン 主に筋蛋白中に含まれ、分解後再利用されずに95%以上が尿中に排泄される。骨格筋の蛋白代謝をある程度反映。
H)間接カロリメトリー法 呼気ガス分析による酸素消費、二酸化炭素排出、呼吸商を計測する方法。術後などの異化亢進期の監視として将来有望。

 

2)窒素バランス(N-balance)

 窒素バランスとは摂取した蛋白質の含有窒素量と、体外に排泄された総窒素量の差である。生体の蛋白質代謝が同化の方向にあるのか異化の方向にあるのかを判定し、栄養補給の指標とする。

(A)窒素バランスの計算メモ6)参1)

N-バランス=Nin-Nout

 

(B)窒素摂取量の計算

1.蛋白中窒素含有量

Nin=投与蛋白質(g/日)×0.16

(蛋白質は16%の窒素を含有している。)

2.アミノ酸中窒素含有量

Nin=アミノ酸量(g/日)×0.81×0.16

(アミノ酸量の81%が蛋白量となる。その16%が窒素量)

 

(C)窒素排泄量の計算(g/日)

Nout=尿中尿素窒素(g/日)+1
もしくは、
Nout=尿中尿素窒素(g/日)×1.25

(1gは小児において汗や便あるいは尿中尿素窒素以外で尿中に排泄されるであろう窒素量を推測したもの。成人では大きくなり2〜4g程度と考える。)

(D)1日窒素バランスの正常値

0〜4ヵ月+90〜+180mgN/kg
4〜17ヵ月+90mgN/kg
17ヵ月〜3歳+70mgN/kg
3歳〜7歳+40mgN/kg

メモ6) 成人では窒素バランスは±0であり、損失量と摂取量(54mg/kg/日)が等しいが、乳児は成長に伴う体窒素の増加のため、成人に比べ体重当たり約3倍の150mg/kg/日の窒素を必要とする。

参考文献1) 水田祥代:栄養輸液における栄養アセスメント-小児の場合。臨床水電解質,8:107-115,1988

3)血清総蛋白、アルブミン濃度(年齢別正常値)

年齢 総蛋白(g/dl) アルブミン(g/dl)
未熟児 4.3〜7.6 3.0〜4.2
新生児 4.6〜7.4 3.6〜5.4
幼児 6.2〜8.0 4.0〜5.0
学童期以降 6.0〜7.8 3.5〜5.0

・膠質浸透圧の推定=血清アルブミン×5.54+血清グロブリン×1.43

 


 

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