B.呼吸管理処置各論

5.新生児の呼吸管理

新生児未熟児における呼吸管理にはその解剖、生理学的特徴を加味した、とくに繊細な扱いが必要である。また、新生児特有の呼吸障害とその管理法についてまとめた。

 

1)生理学的特徴と問題点

(A)呼吸器系の特徴と注意事項

解剖学的特徴 呼吸管理上考慮すべき点
胸壁筋は未発達、横隔膜による腹式呼吸、気道抵抗が高く、肺コンプライアンスが小さい。 一回換気量は少なく、呼吸数が多い。
鼻呼吸である。 口呼吸は呼吸不全のサイン。
経鼻チューブによる換気障害。
頭部が大きく気道が狭い。 上気道閉塞を来しやすい。
腹部が相対的に大きい。 腹部膨満により横隔膜が挙上し、呼吸障害をきたしやすい。
胸腔容量が小さい。 肺の過膨張が静脈還流障害、心圧迫による循環不全を来す。

(B)肺血管抵抗に対する考慮

出生に伴い肺血管抵抗は著明に低下するが、生直後は未だ高値であり、7-10日かけて徐々に低下してゆく(下図参照)参12)。この間、呼吸障害およびそれに対する治療により肺血管抵抗が大きく変化し、特に体肺循環混合と不均衡の存在する患者では、循環系へ大きな影響を与えることを考慮する必要がある。

参12)Rudolph AM, Congenital diseases of the heart, p31, Year Book Medical Publishers, Chicago, 1974

2)新生児における呼吸障害

(A)未熟児の呼吸不全

 修正在胎週数29週以下では、出生直後より生命維持のための蘇生的治療としての人工呼吸管理が必要なことが多い。救命的処置と共にCLD発生を回避する治療戦略が必要である。  

1.呼吸器系の未成熟とは?

・細胞の未熟性
・肺毛細管の未発達
・肺表面活性物質の分泌不十分
・呼吸筋力

2.代表疾患
・RDS(新生児呼吸窮迫症候群):肺表面活性物質の不足によって生じる、サーファクタント補充療法が有効。
・MAS(胎便吸引症候群):胎生末期の低酸素症による胎便吸引による物理的、化学的肺炎。

 

(B)新生児慢性肺疾患(CLD)

新生児期の慢性肺障害の鑑別には厚生省研究班の分類が用いられる。急性肺障害の時期から酸素濃度、気道内圧を低く保ち、人工呼吸期間を短縮することが発生予防につながるとされているメモ33)

  
新生児慢性肺疾患の分類
(厚生省心身障害研究 慢性肺障害班 1991)


新生児(の)慢性肺障害(Chronic Lung Disorder in the newborn)

先天奇形を除く、肺の異常により酸素投与を必要とするような呼吸窮迫症状が、新生児期に始まり、日齢28を超えて続くもの。

新生児慢性肺疾患(Chronic Lung Disease in the newborn)

I.新生児の呼吸窮迫症候群(RDS)が先行する新生児慢性肺障害で、生後28日を超えて胸部X線上び漫性の泡沫状陰影もしくは不規則索状気腫状陰影を呈するもの。
II.RDSが先行する新生児慢性肺障害で、生後28日を超えて胸部X線上び慢性の不透亮像を呈するも、泡沫状陰影もしくは不規則索状気腫状陰影には至らないもの。
III.RDSが先行しない新生児慢性肺障害で、臍帯血IgM高値、胎盤炎、臍帯炎など出生前感染の疑いが濃厚であり、かつ生後28日を超えて胸部X線上び慢性泡沫状陰影もしくは不規則索状気腫状陰影を呈するもの。
IV.RDSが先行しない新生児び慢性肺障害で、出生前感染に関しては不明であるが、生後28日を超えて胸部X線上び慢性泡沫状陰影もしくは不規則索状気腫状陰影を呈するもの。
V.RDSが先行しない新生児慢性肺障害で、生後28日を超えて胸部X線上び慢性の不透亮像を呈するも、泡沫状陰影もしくは不規則索状気腫状陰影には至らないもの。
VI.上記I〜Vのいずれにも分類されないもの。

メモ33)CLD発生予防のための人工呼吸器設定の目安

PaO2
PaCO2
最高気道内圧  

50〜70mmHg (SpO2=95%)
50mmHg
20mmHg以下

 

(C)PPHN(新生児遷延性肺動脈高血圧症)

 胎児期の高肺血管抵抗が遷延し、右→左シャントの持続、左心系の圧迫による低酸素血症、循環不全を呈する。

1.発生機序

・肺胞低形成
  横隔膜ヘルニアとの合併
  肺胞数、肺動脈数の減少、肺動脈壁の肥厚、末梢肺動脈の異常筋層化
・肺血管の過敏な機能的収縮
  体酸素性肺血管収縮(HPV)、血管収縮性物質に対する反応性の亢進

2.治療

・肺血管拡張療法(肺高血圧クライシスの項に準ずる)
・刺激による交感神経系賦活の回避:Minimal handling、鎮静、侵襲の回避
・HPVの回避:体酸素血症、アシドーシスを避ける
・ECLA:肺血管の反応性の高い時期における刺激を回避し、肺の成熟と反応性の低下を待つ

 


 

前項目
B.循環管理処置各論−4人工呼吸器

呼吸の管理・目次

次項目
B.循環管理処置各論−6.体位排痰法